ブログについて

映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。


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執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)

ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。


60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』


ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』



デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』



サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』



ジェイソン・ヘラー 著
『ストレンジ・スターズ ―デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』



ピーター・ビーバガル 著
『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ -いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』

70年代風のインテリアが好きな方にお勧め――映画『ウォッチメン』のコメディアンの部屋にあるアーチ型のフロア・ランプ

映画  インテリア   / 2023.12.04

 

 前々回から映画『ウォッチメン(Watchmen)』の中のコメディアンの部屋のインテリアについて書いています。前回は部屋の中の家具に注目しましたが、今回はさらに照明に目を向けてみたいと思います。

 まずは前回と同様、映画の中でコメディアンの部屋が映っている動画を掲載しておきますので、ご覧になっていない方はどうぞ。

映画『ウォッチメン(Watchmen)』の中のコメディアンの部屋

 ご覧の通り、部屋全体を天井から明るく照らす照明器具はありません。その代わり、ビーム角の狭い複数のスポット・ライトが天井から各所を照らしています。

 で、注目していただきたいのが、前回見たイームズ・ラウンジ・チェアのすぐ脇に置かれているフロア・ランプです。以下の静止画をご覧ください。向かって右側にある上部へ向かってアーチ型になっているのはフロア・ランプがあるのはお分かりでしょうか?(上部が画面から切れているので分かりずらいとは思いますが)。

映画『ウォッチメン(Watchmen)』の中のコメディアンの部屋

 別の方向から映っているのを見てみましょう。

映画『ウォッチメン(Watchmen)』の中のコメディアンの部屋

 これまた暗くてわかりずらいですが、向かって右側に映っている多頭のフロア・ランプの形状を確認できたでしょうか?

 これとまったく同じかどうかは分かりませんが、映像に映っているのは以下のタイプのフロア・ランプであることに間違いありません。

 この写真はAmazon.comの商品ページから引用しました。同ページによると、カナダのDorel社というところの製品です。

 この種のアーチ型のヘッドが複数に分かれているフロア・ランプは、かなり多様な類似の商品が出ています。

 例えば、以下の類似のフロア・ランプをご覧ください。写真はAmazon.comの商品ページから引用しました。

 この種のフロア・ランプのヴァリエーションは、例えばAmazon.comでちょっと調べただけでも多数出てきます。ちなみに、いずれも有名デザイナーの商品ではないので、手を出しやすい価格帯です(日本のアマゾンでも「アーチ フロアランプ」ないしは「アーチ フロアライト」などで検索してみてください。いろいろ出てくるはずです)。

 上の写真では、壁がグレーで白い張地のソファーと組み合わせて置かれていますが、もしこの壁が前回紹介した壁紙やタイルだったらどうでしょうか? このフロア・ランプの印象も随分と変わり、おそらく70年代風のインテリア・デザインに近づくようにも思えます。

 実は私自身もリビング・ルームに、これと同種のフロア・ランプを置いています。なので断言しますが、実物は写真で見るよりもかなり迫力があるので、これひとつ置くだけで部屋の雰囲気ががらっと変わります。70年代風のインテリアの要素を取り入れたいと思っている人にはお勧めです。

 ただし、注意すべき点もあります。それはフロア・ランプの高さです。写真では伝わりずらいと思いますが、実は上の写真の商品の高さは、88インチ(223.52cm)もあります。ということは、一般的なマンションの部屋の場合、ほぼ天井につきそうな感じになってしまう恐れがあります(現在の日本のマンションのリビング・ルームの一般的に最も多い天井高は、2メートル40センチ)。

 類似のフロア・ランプの中には、もう少し高さが低いのものあるので、ご自宅の天井の高さを考慮して選ばれた方がよいかと思われます。

 以下をご覧ください。高さの低い同種のフロア・ランプが一人掛けのソファーの隣に置かれていますね。画像はShelterneessの中の記事’25 Refined Blue Living Room Decor Ideas’から引用しました。

 こちらのインテリア・デザインは、まったく70年代風ではなく、アールデコに近づいている感じですが、ブルーの壁とソファーとアレカヤシのグリーンが組み合わさった鮮烈な印象に一瞬で心をつかまれますね。ただ、この場合、ラグの幾何学的な模様とマントルピースの上のオブジェの色に合わせて、フロア・ランプの色を真鍮やゴールドにした方がいいような気もします。

 同種のフロア・ランプの真鍮のタイプをご覧ください。画像はAmazon.comの商品ページから引用しました。

 この真鍮のフロア・ランプの美しさは、先ほどのブルーの部屋だけでなく、ブラックないしは濃いレッドなどの壁とかでも際立ちそうですね。

 例えば、上のフロア・ランプとはヘッドの形が異なるゴールドのタイプですが、濃い壁の色と合わせた以下の感じはどうでしょうか? 画像は、THE WHITE TEAK COMPANY商品ページから引用しました。

 ネイビーの壁の色とフロア・ランプのゴールドの色の組み合わせに注目すると、ゴールドの美しさが引き立てられているのが分かります。ただ全体のインテリア・デザインとして、正直なところをいえば、ソファーとクッションとコーヒー・テーブルがいまいちあっていないように感じます。せっかく背景の壁のモールディングがクラシカルな雰囲気になっているわけですから、ソファーとクッションはベルベットのような素材を使った方がよいのではないかと思います。また、コーヒー・テーブルもゴールドの脚の方がさらにぴったりくるはずです。

 ところで、日本のマンションの場合(特に賃貸の場合)は、白い壁紙が基本ですよね。それに、実際に白い壁を基調にしたモノトーンなインテリアを好まれる方が多いようにも思われます。その場合だったら、ブラックのフロア・ランプの方がしっくりくきそうです。以下をご覧ください。こちらは84インチ(213.36cm)なので、高さがやや低めです。写真はAmazn.comの商品ページから引用しました。

 ブラック、ホワイト、グレーからなるこの部屋の感じだったら、日本の住宅でもすぐに真似できそうですね。ただ、このモダンなインテリア・デザインのポイントは、床が日本の賃貸マンションに多い木目の茶色のフローリングではなく、ホワイトになっている点でしょう。

 ついでに以下のアーチ型の複数ヘッドのフロア・ランプをご覧ください。画像はAmazon.comの商品ページから引用しました。

 こちらのタイプの場合、もはや70年代風ではなく、むしろコンテポラリーな印象を受けます。個人的な好みで言えば、このフロア・ランプの背景の壁にメタリック・シルバーか鏡面仕上げのホワイトの面材を貼って、フューチャリスティックなインテリア・デザインにしたくなります。そうすれば、『スタートレック』などの近未来を舞台にしたSF映画などに出てきそうな感じにもなりそうじゃないですか?

 いろいろ見てきましたが、70年代のインテリアが好きな人だったら、結局のところ、最初のクロムのフロア・ランプに心惹かれるのではないでしょうか。

 また、さらに本格的な70年代インテリアに徹底的にこだわりたいという方だったら、やはり当時のヴィンテージものがいいということになると思いますが、その場合、これはいかがでしょうか? 画像はPAMONO商品ページから引用しました。

ピエール・フォリ(Pierre Folie)によって1969年にデザインされたハイドラ・フロア・ランプ(Hydra Floor Lamp)

 これはフランスのデザイナー、ピエール・フォリ(Pierre Folie)によって1969年にデザインされたハイドラ・フロア・ランプ(Hydra Floor Lamp)です。

 ちなみに、隣に一緒に並んでいるチェアは、ドイツ出身のルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)と同じくドイツ出身のリリー・ライヒ(Lilly Reich)によって1929年に発表された20世紀前半のモダニズムを代表する「バルセロナ・チェア(Barcelona Chair)」です。

 バルセロナ・チェアについては、このブログでも以前に以下の映像との関連で言及したことがあります。

アメリカのR&Bシンガーのトレイシー・スペンサー(Tracie Spencer)の1999年の「イッツ・オール・アバウト・ユー(ノット・アバウト・ミー)(It’s All About You (Not About Me))」のミュージック・ビデオ

ジェームズ・ボンド・シリーズの2006年の映画『007/カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)』

2007年のジョセフ・コジンスキーが監督したGMグループのサーブ(Saab)のコマーシャル

2010年のSF映画『トロン:レガシー(Tron:Legacy)』の中にバルセロナ・チェアが登場するのを見てきました。

 これらについて詳しくは、以下の二つの記事ををご覧ください。

映画『トロン・レガシー』のセイフ・ハウスのインテリア(1)ーージョセフ・コジンスキー監督のサーブのコンセプト・カー「エアロX」のコマーシャル映像

ミュージック・ビデオの中のジョン・ロートナー設計のシーツ=ゴールドステイン・レジデンス(1)――トレイシー・スペンサーの「イッツ・オール・アバウト・ユー(ノット・アバウト・ミー)」

 ピエール・フォリのハイドラ・フロア・ランプの別の写真をご覧ください。

ピエール・フォリ(Pierre Folie)によって1969年にデザインされたハイドラ・フロア・ランプ(Hydra Floor Lamp)

 先ほどとアームの形が異なっているのは、各々のアームの部分が自由に動かせるからです。 

 ちなみに値段ですが、現在は生産されていないヴィンテージのランプなので、当然のことながらなかなか高額です。この画像を引用したPAMONOでの値段は€4,092だったので、これを書いている2023年12月1日の時点のレートで円に計算すると659,262円です。先ほどのAmazon.comで見ていたフロア・ランプとは桁が違いました。

 もう一つついでに紹介しておきましょう。ダーク・グレーの壁を背景にして、とても美しく輝やいているクロムのフロア・ランプをご覧ください。これまで見てきたのとは異なり、アーチ型ではありませんが、70年代風のインテリア空間にも合わせられるのではないかと思います。

 このとても素敵な写真の中のフロア・ランプは、スウェーデンのインダストリアル・デザイナーのリィク・フォン・シャンツ(Lycke von Schantz)によってデザインされたホーヴネース(HOVNAS)というイケアの商品です。残念ながら、現在は絶版になっています(2023年の春ぐらいまで販売されていました)。

 以下の写真のように、ホーヴネスはテーブル・ランプも販売されていました。 

 こちらのテーブル・ランプは、私も自宅のダイニング・ルームのサイドボードの上に置いています。以下は、以前に自宅のリビング・ルームに置いていたときの写真です。

 このランプのデザイナー、リィク・フォン・シャンツがデザインした商品は、他にもイケアに多数あります。個人的には、彼女のデザインした商品はどれも家に置きたくなるものばかりです。例えば、買っておけばよかったと深く後悔している絶版となった以下のウォール・ランプとかもそうです。

 ソーデルスヴィク(SÖDERSVIK)という商品名で、2015年にリリースされました。以下で電気がついた写真もご覧ください。

 さらに以下をご覧ください。シーリング・ランプも販売されていました。

 これなんかも70年代風のインテリアにぴったりきそうな感じです。

 

 次回は『ウォッチメン』からいったん離れて、イギリスのテレビ・シリーズの『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ(Life on Mars)』について書いてみたいと思います。ですが、そこでもしつこくアーチ型のフロア・ランプについて書くつもりです。

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