ブログについて

映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。


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執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)

ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。

『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』

ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』


60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』


ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』



デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』



サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』



ジェイソン・ヘラー 著
『ストレンジ・スターズ ―デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』



ピーター・ビーバガル 著
『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ -いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』

映画『初体験/リッジモント・ハイ』のアーケード・ビデオ・ゲーム『ゴーフ』と『プレアデス』――サミー・ヘイガーの「ファスト・タイムズ・アット・リッチモンドハイ」とジャクソン・ブラウンの「サムバデイズ・ベイビー」

ビデオ・ゲーム  映画  音楽  車・バイク  テレビ・シリーズ   / 2023.03.18

 

 3回前の記事で映画『トロン(Tron)』の話をしたところから、その背景となっている当時のアーケード・ビデオ・ゲームについて書いています。で、その終わりに、「次回は『パックマン』を軸にしながら、映画やドラマや音楽とアーケード・ビデオ・ゲームのかかわりについて、もう少し書いてみたいと思います」と述べていたのですが、前回は『パックマン』と同年の1982年にリリースされたアーケード・ビデオ・ゲームの『バザーク』と関連する話をしました。その結果、前回も『パックマン』の話にまでたどり着きませんでした。

 さて、前回の記事の最後には、「『バザーク』と同じ年にリリースされた別のアーケード・ビデオ・ゲーム『ミサイル・コマンド』とそれに関連することを書いてみようかなと思っています」と書きました。ということで、今回は『ミサイル・コマンド』の話をしようと思っていたのですが、その前にある映画のことを思い出したので、その話から始めます。

 アメリカの高校生たちの恋と青春を描いたエイミー・ヘッカーリング(Amy Heckerling)監督の1982年のコメディ映画『初体験/リッジモント・ハイ(Fast Times At Ridgemont High)』をご覧になったことはありますでしょうか?

 『初体験/リッジモント・ハイ』は、このブログでアーケード・ビデオ・ゲームの話を書くきっかけとなった映画『トロン』の翌年の映画です。また、そのオープニングもエンディングも、アーケード・ビデオ・ゲームに興じている少年たちを映す場面から始まります。

 念のために言っておくと、『初体験/リッジモント・ハイ』は主題的にアーケード・ビデオ・ゲームとまったく関係ない映画です。それにもかかわらず最初と最後にアーケードの風景が映し出されるということは、「アーケード・ビデオ・ゲームの黄金時代」とも呼ばれる当時、どれほどそれがティーンエイジャーたちの日常の当たり前の一部となっていたかを示していると言えます。

 ということで、ひとまず『初体験/リッジモント・ハイ』の中のオープニングのシーンとエンディングのシーンをつなげた以下の動画をご覧ください(始まってから25秒あたりからはエンディングの方の場面です)。

映画『初体験/リッチモンド・ハイ』のオープニングとエンディングの映像

 1982年に公開の映画の中のアーケードのシーンということで、当時の筐体型のビデオ・ゲームがいろいろ見られますね。

 冒頭に『パックマン』が登場しますが、その後に映っていたビデオ・ゲームが何か分かりますか? もし「全て知っているよ」という方がいらっしゃれば、恐れ入ります。かなりのクラシック・ビデオ・ゲーム通でいらっしゃいますね。

 まず最初の『パックマン』に続いてはっきりと映っているのは、ゲーム・プログラマーのジェイ・フェントン(Jay Fenton:現在は性転換してジェイミー・フェントン(Jamie Fenton)という名前になっています)によって考案され、1981年にアメリカのミッドウェイ・マニュファクチュアリング(Midway Manufacturing)からリリースされた『ゴーフ(Gorf)』というシューティング・ゲームです。以下で実際の『ゴーフ』のプレイ動画をどうぞ。

アーケード・ビデオ・ゲーム「ゴーフ」(1981年)

 ご覧の通り、『ゴーフ』は5つの異なる場面で、違う方式で攻めてくる敵と戦います。これまたご覧の通り、その「ミッション1」は『スペースインベーダー』を、「ミッション3」は『ギャラシアン』を摸倣したものとなっています。

 このように異なる場面に切り変わるというのは、その後は当たり前のことになりますが、当時としては新しい形式でした。以前、このブログで紹介した70年代を代表するアーケード・ビデオ・ゲーム『スペースインベーダー』『ギャラクシアン』の場合、敵を全て倒しクリアして再び次の敵が整列しても、その背景は変わらず、戦闘の仕方も同じままでした。GAME HISTORYの中の『ゴーフ』の解説記事によると、『ゴーフ』は複数の場面を使った最初のゲームだそうです。

 また、『スペースインベーダー』や『ギャラクシアン』と異なる特徴として、下部の三分の一の限られた範囲ではありますが、旗艦を縦横斜めと移動させることができます。加えて、前回紹介したビデオ・ゲーム『バザーク』と『ストラトヴァクス(スピーク&レスキュー)』と同様、『ゴーフ』は音声合成を使用した初期のビデオ・ゲームの一つです。

 ついでの話をすると、『ゴーフ』は1979年の映画『スタートレック(Star Trek: The Motion Picture )』と同時宣伝する抱き合わせのゲームにするつもりだったようです。ですが、IMDbの中の『ゴーフ』に関するトリビアのページによると、その脚本を読んだ考案者のジェイ・フェントンは、そこには実際の戦闘シーンが含まれていなかったため、『スタートレック』をビデオ・ゲームの形に変えることができないと判断しました。そのため、『ゴーフ』は結果として『スタートレック』関連商品にはならなかったようです。

 とはいえ、改めて『ゴーフ』の旗艦に目を向けてみると、『スタートレック』のエンタープライズ号を模していると言われれば、確かにそんな感じもしなくもないですね。

 別のビデオ・ゲームも見てみましょう。映画『初体験/リッジモント・ハイ』の冒頭で『ゴーフ』の画面が映った後に、上半身裸の若者がゲームをやっているのが見えます。画面自体がちらっとしか映らないので、何のゲームをやっているかは、よほど当時のビデオ・ゲームに詳しい人しか判別できないのではないでしょうか。

 ということで、私も分からなかったので、Fandomで調べて見たら、その中の情報ページの’The Arcade – “Fast Times at Ridgemont High”‘が教えてくれました。それによると、 1981年に日本のテーカン (現在のテクモ) によってリリースされたシューティング・ゲーム『プレアデス(Pleiades)』だとのことでです。以下で実際のプレイ動画をどうぞ。

アーケード・ビデオ・ゲーム『プレアデス』(1981年)

 場面をクリアすると、画面が縦スクロールして、次の戦闘地へ向かって行き、別の敵と戦うという展開が、これまた当時のプレイヤーを興奮させたのではないかと思われます。

 ところで、先ほどの映画『初体験/リッジモント・ハイ』の中で『プレアデス』をプレイしていた上半身裸の金髪の男性が誰か分かりますか?

 そう、駆け出しの頃のショーン・ペン(Sean Penn)なんですよ。同映画の中では、いつもストーンしていて言動のおかしなサーファーのジェフ・スピコリ(Jeff Spicoli)を演じています。

 映画ファンの方々には言うまでもないかもしれませんが、ショーン・ペンと言えば、ニック・カサヴェテス(Nick Cassavetes)監督の『シーズ・ソー・ラヴリー(She’s So Lovely)』(1997年) でカンヌ国際映画祭の男優賞を、クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督の『ミスティック・リバー(Mystic River) 』(2003年)とガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)監督の映画『ミルク(Milk) 』(2008年)でもアカデミーとゴールデングローブの主演男優賞を獲得しているなど、今や大物俳優の地位を確立していますね。

 ですが、この映画の撮影時のショーン・ペンは、22歳になるかならないかの年齢(ショーンは1960年生まれで、映画『初体験/リッジモント・ハイ』の公開は1982年)で、まだまだこの先どうなるか分からない若い役者でした。実際、映画デヴューしたのも前年ことでした。

 映画『初体験/リッチモンドハイ』をご覧になっていないという方は、以下のトレイラーで、ぜひ若き日のショーン・ペンの姿をご覧ください。

映画『初体験/リッチモンドハイ』のトレイラー

 全編にわたって、いかにも80年代のハイスクールを舞台にしたアメリカのコメディ映画のばかばかしさが炸裂していますね。それにショーン・ペンも、いかにもストーンした若者的なもたっとした口調で「オーノウ」や「テリブル オーサム」などと声を発していましたね。

 未見の方、どうですか? しょうもない映画だとか思いながらも、家でビールでも飲みながら適当に観るのには、なかなかいい作品ですよ。今(2023年)から遡ること、41年前の映画です。80年代が青春だったという方だったら、今改めて観てみると、きっと郷愁の念すら湧いてくるんじゃないかと思います。ぜひとも今度のお休みの前の日の夜にでも、バドワイザーの缶でも準備して、ご鑑賞ください。

 

 アーケード・ビデオ・ゲームの話からそれたままにはなりますが、映画『初体験/リッジモント・ハイ』自体の話をもう少し続けさせてください。

 そもそも、この映画、日本での評価はどうなんでしょう? この種の映画は、どうしてもアメリカと日本の文化的違いのせいか、ギャグの面白さがいまいとつ伝わらない場面もありそうです。なので、「観たけど面白くなかった」とか「まったく印象に残っていない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。試しにフィルマークスでのこの映画へのみんなの評価を見てみたら、案外悪くありませんでした。2023年3月18日に確認したところ、5段階評価中の3.5でした。

 ひとまず内容は別としても、映画ファンの方だったら、ショーン・ペン以外の他の出演者の顔触れにも驚かされるはずです。

 例えば、先ほどのトレイラーの中でアメフト選手の姿で映っていた役者です。そう、後にカンヌやアカデミーで男優賞も獲得し、今や名優として知られるようになるフォレスト・ウィテカー(Forest Whitaker)なのです。 

 以下の同映画の中のシーンをご覧ください。ハイスクールのライバルのアメフトのチームのやつらに愛車をめちゃくちゃにされたと思い込んだウィテカーが、激怒に駆られて試合で暴れまくるという名シーンです(本当は車をめちゃくちゃにしたのは、同じ高校に通っているショーン・ペン演じるサーファーのジェフ・スピコーリなのですが)。

映画『初体験/リッチモンドハイ』の中でハイスクールのアメフトのスター選手を演じるジョン・ウィテカー

 実は、フォレスト・ウィテカーは、この役柄で映画への初出演を果たしました。

 「初」ということで言えば、脚本を担当したキャメロン・クロウ(Cameron Crowe)も、同作品が映画製作とかかわる最初の作品となりました。後にクロウは、トム・クルーズ、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス出演の大ヒット映画『バニラ・スカイ(Vanilla Sky)』の監督・脚本を始めとして、映画製作者として今や確固たる地位を築いています。ですが、彼が映画製作にかかわる初仕事は、実のところ、この映画『初体験/リッチモンドハイ』での脚本なのです。

 そもそも同映画の基になっているのは、キャメロン・クロウが22歳のとき、密かに高校生のふりをしてサンディエゴのクレアモント高校に入学し(校長から許可を得たそうです)、そこで観察した同級生たちの言動を観察して書いたノンフィクション『ファスト・タイムズ・アット・リッチモンド・ハイーー実話(Fast Times at Ridgemont High: A True Story)』(1981年)です。

 それはそうと、映画『初体験/リッチモンド・ハイ』の製作前のちょっと興味を引く裏話として、当初あのデヴィッド・リンチ(David Lynch)が監督するという話もあったそうです。当時のリンチと言えば、監督した作品は『イレイザー・ヘッド (Eraserhead)』(1976年)と『エレファント・マン(The Elephant Man)』(1980年)の2本のカルト映画だけでした(このブログの以前の記事で、ジュリー・クルーズの音楽との関連で取り上げた映画『ブルー・ベルベット(Blue Velvet)』(1986年)やTVドラマ『ツイン・ピークス(Twin Peaks)』(1990-1991年)よりも前のことです)。

 脚本を書いたキャメロン・クロウは、同映画の配給会社ユニヴァーサル・ピクチャーズの幹部の勧めで、実際に当時デヴィッド・リンチとも顔を合わせたそうです。

 Indie Wireの中のMichael Nordine氏の記事‘David Lynch Almost Directed ‘Fast Times at Ridgemont High,’ Reveals Cameron Crowe’によると、クロウが話をしているとき、リンチの顔には「苦笑い」が浮かんでいたとのこと。リンチは「これは本当に素晴らしい物語だ」とは言ってくれたものの、結果的に次のように断ってきたそうです。「あまり私がやるような種類ものではないな。だけど、うまくいくことを祈っているよ」。

 こうしてリンチが監督を辞退したことで、その後、エイミー・ヘッカーリングが監督をすることになるわけです。で、同映画はヘッカーリングにとっても長編映画の初監督作品となりました。

 結果として言えば、当時はいまだほぼ無名だったエイミー・ヘッカーリングが監督を務めたことで、その後の10 代のコメディ映画の青写真のような作品が出来上がったわけで、もちろんそれで良かったわけです。

 だとしてもですよ、デヴィッド・リンチが監督をしていたらと想像してみたくなるのは、私だけではないでしょう。デヴィッド・リンチ映画のファンの方で、かつ『初体験/リッチモンドハイ』もご覧になったことがある方は、ここでちょっと思い巡らしてみてください。例えば『ツイン・ピークス』的な『初体験/リッチモンドハイ』なんて、どうでしょう。想像してみただけでも面白そうだと思いませんか?

 さらに「初」ということで言えば、あのニコラス・ケイジ(Nicolas Cage)もそうです。彼の映画の初出演作も、この『初体験/リッチモンドハイ』なのです。

 とは言っても、ほんの一瞬しか出てこない端役です。当初は同映画の重要な役ブラッド・ハミルトン(Brad Hamilton)を演じる予定でしたが、結局その役を演じることになったのはジャッジ・ラインホルド(Judge Reinhold)となりました。結果、ニコラス・ケイジは、その同じ店で働く従業員として一瞬映るだけの裏方の役になってしまいました。

 METNTAL FLOSSの中のSean Hutchinson氏の記事’15 Quick Facts About ‘Fast Times at Ridgemont High”によると、ニコラス・ケイジが端役へ回されたのは、オーディションの段階での奇妙過ぎるインプロビゼーションのせいだったそうです。ちなみに、この映画でのニコラス・ケイジの名前のクレジットは、改名前のニコラス・コッポラ(Nicolas Coppola)となっています(ニコラス・ケイジは、あのフランシス・フォード・コッポラ監督の甥です)。

 ついでに言えば、ニコラス・ケイジは後にデヴィッド・リンチ監督の映画『ワイルド・アット・ハート(Wild at Heart)』(1990年)で主役を務めることにもなりますね。

 以下の写真をご覧ください。『初体験/リッチモンド・ハイ』の中で、映画に初出演した瞬間のニコラス・ケイジです(向かって右側)。ファストフード店で働いている役を演じています。写真はSlash Filmの中のJEFF KELLY氏の記事‘One Little Hiccup Kept Nic Cage From A Lead Role In Fast Times At Ridgemont High’から引用しました。

映画『初体験/リッチモンド・ハイ』の中のニコラス・ケイジ

 映画『初体験/リッチモンド・ハイ』では、他にも現在のベテラン俳優たちの初々しい姿が見られます。映画初出演ではないものの、いまだ駆け出し中のジャッジ・ラインホルド(Judge Reinhold)やジェニファー・ジェイソン・リー(Jennifer Jason Leigh)も、本作をきっかけとして、キャリアを大きく飛躍させていくことになります。

 ところで、コメディ的な青春映画と言えば、そこに躍動感をもたらすのに欠かせないのが魅力的なサウンドトラックですよね。もちろん、『初体験/リッチモンドハイ』に流れる音楽も、高校生のそれぞれの登場人物の行動や心情を生き生きと描き出すのに非常に重要な役割を果たしています。

 ご覧になっていない方、あるいは観たのが随分昔ことなので覚えていなという方のために、いくつか映画の中で流れる曲を紹介しておきます。

 まずはサウンドトラックの中のタイトル曲「ファスト・タイムズ・アット・リッチモンド・ハイ(Fast times at Ridgemont High)」ですが、それを堂々たる声で歌っているのは、サミー・ヘイガー(Sammy Hagar)です。

 アメリカのハード・ロック好きの方には、サミー・ヘイガーと言えば、70年代半ばにはアメリカのハード・ロック・バンド、モントローズ(Montrose)のシンガーとして、そして1985年代から1996年まではアメリカのハード・ロック・バンド、ヴァン・ヘイレン(Van Halen)のシンガーとして活躍していたことで知られていますね。

 サウンドトラックに収録のタイトル曲は、サミー・ヘイガーがちょうどモントローズとヴァン・ヘイレンの間にソロで活動していた時期の作品です。エッジの効いたギターのリフとドライブ感溢れるミドル・テンポのリズムに乗って、サミー・ヘイガーの歌声が力強く迫ってくる、まさしくこれぞアメリカのハード・ロックの王道という感じの優れた楽曲です。映画のシーンとともにどうぞ。

映画『初体験/リッチモンド・ハイ』の中でサミー・ヘイガーが歌う「ファスト・タイムズ・アット・リッチモンド・ハイ」が流れる場面

 ちなみに、この場面でショーン・ペンがめちゃくちゃな運転をした挙句、激しくぶつけてボロボロにしてしまう車、アメリカ車が好きな方だったら一目で分かりますね。そう、カマロ(Camaro)です。念のため、Ls1Techの中のDonna Rodriguez氏の記事’11 Movies Featuring Camaros’で確認したところ、1978年製のシボレーのカマロZ28でした。

 車好きかつ映画好きという人だったら、カマロと言えば、まず「トランスフォーマー」のシリーズを思い出しませんか? ここではどうでもいい話になりますが、今現在カマロの姿を見るたびに思うことが一つあります。それはふと気がつくと日本ではこの種のアメリカ車が、めっきり少なくなり、走っている姿をあまり見かけられなくなったということです。日本の市場がドイツ車に占有されてしまい、アメリカ車が大きく撤退傾向にあるのが、個人的には本当に残念でなりません(誤解のないように念のため言っておくと、もちろんドイツ車が悪いわけではありません。個人的にはメルセデスもポルシェもBMWもアウディも好きですし)。その辺りのことも含めて、いつかトランスフォーマーの中の車の話も書いてみたいと思っています。

 

 さて、もう一つサウンドトラックの中から、80年代のポピュラー・ミュージックが好きな人のために、ビルボード ホット100のシングル チャートで7位にまで上がったヒット曲を紹介しておきます。

 アメリカのシンガー・ソングライターのジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)の「サムバディズ・ベイビー(Somebady’s Baby)」です。以下の映画の中の映像を編集した動画とともに、どうぞお聴きください。

映画『初体験/リッチモンド・ハイ』とジャクソン・ブラウンの「サムバディズ・ベイビー」

 当時としては、70年代の頃のジャクソン・ブラウンを知っている人からすると、「サムバディズ・ベイビー」は、ちょっとテイストが違う異質な感じの曲に思われたのではないかと思います。ですが、これは何と言っても映画用に作った曲ですからね。クレジットを見ると、アメリカのギタリスト、ダニー・コーチマー(Danny Kortchmar)との共作となっています。

 映画の原作及び脚本を書いたキャメロン・クロウは、当時このジャクソン・ブラウンの曲「サムバディズ・ベイビー」を即座に気に入ったようで、次のように述べています。

 「ジェームス・テイラー、リンダ・ロンシュタット、キャロル・キングと共演したギタリストのダニー・コーチマーがそのリフを考え、ジャクソンがそれで即座に素晴らしいものを作り出したんだよ。……もちろん、彼のオーディエンスはポップではなく、もっとシンガーソングライターよりだけど、「サムバディズ・ベイビー」は純然たるポップだった。彼は何年にもわたって、「これは早漏について書いた賛歌だ」などいったような感じで、その曲を紹介してきたんだろうけど。でも、それはとてもロマンティックな曲だった。珠玉だと思ったよ」(billboardの中のRin Hart氏の記事‘‘Fast Times’ at 40: Amy Heckerling and Cameron Crowe on the Musical Tug-of-War Behind the Iconic Soundtrack’から引用)。

 確かに好き嫌いは別としても、ありがちな言い方をするならば、青春のほろ苦くも甘い恋の気分には、間違いなくぴったりの曲になっています。歌詞の始まりからして、まさにティーン映画にはうってつけです。

 「おい、ちょっと、あの子、瞳に光が浮かんでるよ/誰かの彼女なんだろうな/誰かの彼女に違いないな(Well, just, a look at that girl with the lights comin’ up in her eyes/She’s got to be somebody’s baby/She must be somebody’s baby)」。

 てな感じですからね。

 

 長くなったので、今回の記事はそろそろ終わりにしますね。とは言っても、『初体験/リッチモンドハイ』の中のアーケード・ビデオ・ゲームの話の続きがまだ残っていますので、それについては次回に。それからサウンドトラックについても。さらにゆとりがあれば(なければさらにその後で)Netflixの超人気ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)』から『初体験/リッチモンド・ハイ』へのいわゆるオマージュについても書いてみたいと思っています。

 ご覧になっていない方のために言うと、『ストレンジャー・シングス』は、80年代を舞台にした青春&ホラー&コメディをミックスした連続ドラマで、その中には当時のティーンエイジャーが熱中していたものが多々出てきます。なので、当然のことながら『初体験/リッチモンドハイ』への言及も出てくるわけです。

 現在(2023年3月)は、シーズン4までが放映されています。同ドラマの中では、80年代をよく知っている人だったら、思わず「あーそれ知ってる」と言いたくなるようなアイテムや話題が随所に登場します。もちろん、超人気ドラマになっているぐらいですから、当時を知らない人でも十分に楽しめる娯楽作品になっています。

 ひとまずシーズン1のトレイラーを載せておきますので、未見の方はどうぞご覧ください。

Netflixのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のシーズン1のトレイラー

 このシーズン1については、『グーニーズ(The Goonies)』(1985年)、『スタンド・バイ・ミー(Stand by Me)』(1986年)、『E.T.(E.T. The Extra-Terrestria)』(1982年)、『キャリー(Carrie)』(1976年)、『ポルターガイスト(Poltergeist)』(1982年)などの70年代後半から80年代中頃のティーン向けのヒット映画のエッセンスや雰囲気を一つに融合して、独自の物語へと見事に昇華した感じとでも言えばいいのでしょうか。

 あ、ついでに言うと、全てのシーズンを通して、ウィノナ・ライダー(Winona Ryder)も出ていますよ。それにシーズン2では、なんとですよ、『グーニーズ』の主役マイキーを演じていたショーン・アスティン(Sean Astin)も登場です!

 次回は『初体験/リッチモンドハイ』の中のアーケード・ビデオ・ゲームや音楽に触れながら、それらと関連する80年代のポピュラー・カルチャーの中の気になったものについて少し書いてみたいと思います。

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