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ブログについて
映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。
執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)
ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。
ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』
ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』
デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』
サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』
映画『トロン:レガシー』の「セイフハウス」のインテリア(2)――アキッレ&ピエル・ジャコモ・カスティリオーニの「アルコ」と「アルコK2022」。
前回は映画『トロン:レガシー』の中でジェフ・ブリッジス(Jeff Bridges)演じる ケヴィン・フリン(Kevin Flynn)が住んでいる「セイフハウス(Safehouse)」の室内に置かれている家具へと注目してきました。今回もその話を続けていきます。
まずは以下のランプをご覧ください。画像はCassina IXCのオンラインストアのページから引用しました。
このランプは、日本でもインテリア・ショップに展示されているのを見かけることも多く、かつ一目で記憶に残る形なので、家具にそれほど関心がない人であっても、なんとなく見覚えがあるのではないでしょうか?「あ、そう言えば、知り合いの裕福な人の家のリビング・ルームに置いてあったかも」なんてこともあるかもしれませんね。
確かにこのランプ、かなり広いリビング・ルームにイタリアン・モダンの高級ソファと一緒に置くというのが、ありがちと言ったら怒られるかもしれませんが、定番となっている感があります。日本でも、都心の高級マンションに住まわれている方とか、あるいは住宅メーカーが贅をこらして作ったモデル・ルームとも見紛うようなご自宅に住まわれている方の部屋などで見られそうな組み合わせです。「うちはそうだけど、それが何か? ありがちで悪かったな」と怒らないでくださいね。言いたいことは、インテリアの形としての完成度がとても高いが故に、必然的に多くの場所で見られるようになっている組み合わせだということです。
例えば、以下の一目で超お金持ちであることが分かる邸宅のリビング・ルームをご覧ください。非常に大きなソファーとともに、向かって左側の方に同じランプが見えますよね。画像はDecorsedの中の記事‘Ironman – Furniture, Home Decor, Interior Design & Gift Ideas’から引用しました。
ところで、映画ファンの方、特にマーベル関連の映画が好きな方、気がつきましたか? 実は上の画像は、映画『アイアンマン(Iron Man)』の中の場面です。そう、ロバート・ダウニー・ジュニア(Robert Downey Jr.)演じる主役トニー・スターク(Tony Stark)の家のリビング・ルームなのです。映っている女性は、グイネス・パルトロー(Gwyneth Paltrow)演じるトニー・スタークの秘書ヴァージニア・「ペッパー」・ポッツ (Virginia “Pepper” Potts)です。
さらに中央から少し向かって右側にずれた奥の場所に目を凝らして見てください。前回の記事で指摘した『トロン:レガシー』のセイフハウスの中にも置かれていたチャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames)がデザインした「イームズ・ラウンジ・チェア(Eames Lounge Chair)」が置かれているのが確認できます。
ちなみに、このブログの初回の記事でちらっと述べましたが、このトニー・スタークの大邸宅は、実在の家ではなく、アメリカの建築家ジョン・ロートナーの設計した家から着想を得て映画用に作られたセットです(ジョン・ロートナーの設計した家のひとつ、シーツ=ゴールドステイン・レジデンスについては、映画やミュージック・ビデオなどとの関連で、前々回までの記事を含め、5回に渡って取り上げたばかりです)。
『アイアンマン』をご覧になっていない方もいらっしゃると思うので、以下でトニー・スタークの家の驚くべき外観をご覧ください。画像は、FANCYPANTSの中のGeorgie Mihaila氏の記事‘Is it Real? The Story Behind Tony Stark’s Insane Malibu Mansion in the Iron Man Movies’から引用しました。
尋常ではない大邸宅ですよね。ですが、とてつもない大富豪でプレイボーイという設定のトニー・スタークにはぴったりです。
この家のデザインについても、あれこれ書きたいところではありますが、いつまでたっても映画『トロン:レガシー』へと入っていけなくなりそうなので、ここでは我慢しておきます。
で、本題に入って行きます。以下で、映画『トロン:レガシー』のセイフハウスの室内を、改めてご覧ください。画像は、ilutopの中の記事‘THE MOST FAMOUS DESIGNER LAMPS ON TV’から引用しました。
向かって右側の方に、前回話題にしたホワイトのレザーのイームズ・ラウンジ・チェアがあるのが分かりますか? で、今回注目すべきは、その背後です。先ほどの『アイアンマン』のトニー・スタークの大邸宅のリビング・ルームに置かれていたものと同じランプがあるのが見えますね。
インテリア好きの方からすると、このランプ、あまりにも有名なので、解説なんていらないよと思われるかもしれません。ですが、ご存じない方も当然いらっしゃるはずですので、ここで少々うんちくを語っておきましょう。
この20世紀を代表すると言ってもいい見事なオーバーヘッド・ランプをデザインしたのは、イタリアの建築家でデザイナーのピエル・ジャコモ・カスティリオーニ(Pier Giacomo Castiglioni)とアキッレ・カスティリオーニ(Achille Castiglioni)の兄弟です。1962年にイタリアのフロス(Flos)社から発売されました。
直立したカララ大理石のスラブへ取り付けられているステンレス製のアームが描く大きな弧の形状には、圧倒的な存在感があります。そして、その形状通り、このランプには「アルコ(Arco)」という名前がついています(イタリア語のarcoは「弧」や「弓」を意味します)。
実際に家に置いていらっしゃる方であれば、間違いなく同意してくださると思いますが、このランプ、写真で見るよりも実物はかなり大きく感じます。
先ほどの映画『アイアンマン』の中のトニー・スタークの家のように、かなり広い部屋に置かれている場合であれば、それほど大きいようには感じないかもしれません。ですが、それほど広くない部屋に置いた場合は、良くも悪くもランプの存在感が部屋全体を圧倒することになるでしょう。改めて寸法を調べてみるとW310×D2200×H2300(mm) でした。
ちなみに、最近の日本の一般的な住宅のリビング・ルームでは、2メートル40センチが最も平均的な天井の高さのようです。だとすると、アルコの最上部の高さが2メートル30ということは、ぎりぎり置けるかなという感じですね。インテリア・ショップの方が、間違いなく先に教えてくれるとは思いますが、アルコを購入しようとする場合、やはり自宅の天井の高さはしっかりと確認しておかなきゃですね。
ですが、さらに欲を言えば、最上部の部分と天井の間には、もう少しゆとりの空間があった方が、より良いのではないかと思われます。特に床面積があまり広くない部屋の場合であれば、天井の高さは3メートル以上あった方が、より望ましい気もします(「うちはもっと低い天井にアルコをぎりぎりで置いているんだけど」という方も当然いらっしゃると思いますが、あくまで欲を言えばの話ですので、まったくお気になさらないでください)。
ちなみに、以下の写真をご覧ください。decoistの中のSherry Nothingam氏の記事‘Elegant way to use the Arco in a compact room with high ceiling’から引用しました。
こちらはご覧の通り、豪邸ではありません。それほど広くない部屋で壁づけにしたソファーの脇にアルコが置かれています。そう、アルコは富裕層の豪邸にのみふさわしいランプなどではないのです。このシングルないしはカップルの住まいを思わせるシンプルかつコンパクトな部屋で、むしろアルコが最高の主役となっていますね。
おそらくこの部屋に初めて入った瞬間、アルコのヘッドの部分が全体の焦点となりながら、その大きく弧を描く形状に衝撃を受けて、「わー!」と声をあげたくなるんじゃないかと想像できます。逆に、アルコが置かれていない状態をイメージしてみてください。これを見た後だと、何か物足りない部屋になってしまうように思えませんか?
でも、お気づきでしょうか? このコンパクトなリビング・ルームの場合、やはり天井の高さが肝心なのです。見た感じで推測するに、おそらく天井高は3メートルを超えていると思われます。
それともうひとつ、窓の形状も非常に重要だと思いませんか? 日本の一般的な住宅の場合、概して窓の形状が横長の長方形が多いと思われます。ですが、この部屋の窓は縦長の高さのある形状です(しかも、この部屋の場合は窓の上部の形状がアルコの弧と見事に合っていますね)。
仮に、この部屋の窓に高さがなく、その上下が壁だったらどうなるか想像してみてください。そうなると、この写真のような縦方向に視野が広がることで生まれる解放感が、やや失われてしまいます。これを見ると、そもそも高さのある縦長の窓を背景にした方が、よりアルコの高く弧を描く形も生きてくるのではないかと思う訳です。
こうしたことからすると、アルコだけでなくヨーロッパでデザインされた高く弧を描く他のフロア・ランプの場合も、やはり天井の高さと窓の形状が重要になってきますよね。
近年は、日本でも分譲マンションで、2メートル70センチないしは2メートル80センチぐらいの部屋も出てきているようです。それでも、欲を言えば、もっと天井の高さが欲しいところです。
もちろん、「うちのマンションの部屋は遥かにもっと天井が高いよ」とおっしゃられる方もいらっしゃるとは思います。確かに、賃貸のマンションでも天井の高い部屋がないわけではありません。また、そもそもタワーマンションの最上階の高額の部屋とかだと、二層構造で吹き抜けになっているリビングとかも珍しくないですしね。
ちなみにの話ですが、私が自宅の一軒家とは別に、去年から事務所として借りたマンションの部屋も天井は3メートルです。そして、その高さまで目いっぱい広がった大きな窓がついています。これは自慢でも何でもなく、あえてそういう部屋をしつこく探した結果です。天井と窓の高さがある賃貸の部屋を探そうと思えば、決してないわけではないのです。とはいえ、これまで何度も部屋を借りる時、天井の比較的高い部屋を探し続けてきた経験から言うと、他の条件も考慮しなければならない場合、毎度のことながら結構苦労します。何と言っても、支払うことのできる賃貸料に予算の限界がありますから。
何だかんだ言っても、2022年の今現在、日本では天井の高い住宅が明らかに少ないことは確かです。で、今後はどうなっていくのでしょう。個人的には、もう少し天井を高くした住宅が増えてもいいのではないかと思っています。
というのも、随分前からだとは思いますが、自宅を「海外風のインテリアにしたい」と言う方が、結構いらっしゃるような気がします。自分の直接的な知り合いにもいます。ここで言う「海外風」というのは、他のアジアやアフリカとかではなく、ざっくりと「欧米風」を意味しているようです。
もちろん、フランスもイギリスもアメリカも区別なく、ひとくくりにして「海外風」ないしは「欧米風」なんて言ってしまうのは、インテリアのスタイルに詳しい人からは失笑されてしまうかもしれません。そもそものことを言えば、「海外風」や「欧米風」という同じ言い方をしていても、人によってでイメージしているインテリアは、それぞれ違うものだったりします。例えば、先ほどの『アイアンマン』のようなモダンな部屋を好む方もいらっしゃれば、それこそロココ・スタイルを取り入れたエレガントな部屋を目指されている方もいらっしゃるでしょう。
ですが、いずれの「欧米風」であっても、それ風を実現するには、今回しつこく話している天井の高さや窓の形が無視できない要素なんじゃないかと思うわけです。
例えば、以下の写真をご覧ください。画像はOFDESIGN.NETの中の‘Elegant living in rococo style’から引用しました
いかがですか? このタイプのインテリアが好きな女性の方だったら、写真を見つめているだけで胸がキュンとなり、「こんな素敵な部屋に住めたらいいな」なんて夢見心地になっていきませんか? そもそもの日本の住宅デザインからすると、本気のロココ・スタイルを実現するのは、ほぼ不可能に近いと思われます。ですが、上の写真のように、そのエッセンスを取り入れた部屋だったら近づけるかもしれません。
とはいえ、です。ここでも本当にしつこく言うと、重要なのは天井の高さと窓の形状です。あくまで目測ですが、これまた天井の高さは3メートルを余裕で越えていると思います。
ここまで読んでいただいて、「なんだよ、海外風のインテリアにしたいと思って頑張っているのに、どうせうちは天井の高さもなければ、窓の形も横長だよ」と思われてしまった方もいらっしゃるかもしれません。確かに、その場合、そのままヨーロッパのインテリアを真似てみても、やはりどこか若干見劣りしてしまうことは否めないのかもしれません。ですが、逆に考えて見ればわかりますが、例えばパリのアパルトマンで、日本の古民家風インテリアを実現するのは困難な訳ですから。
なので、単に「海外」をそのまま真似をするのではなく、日本の住宅の在り方をうまく生かしながら、「海外」の要素を加えて、個性的なインテリア・デザインを目指す方が断然面白い部屋になるはずです(インテリアにこだわっている人だったら実際にそうしているとは思いますし、当たり前と言えば当たり前の話ですが)。
もちろん、これから注文住宅で家を建てられる方で、「海外風」を目指し、窓も建具も何もかも自由にできるのであれば、それに越したことはありません。ですが、マンションにお住まいの方の場合、リモデルしたとしても、枠となる部屋の構造を変えるのには限界がありますよね。例えば、本来インテリア・デザインを考える前提となる窓のサッシの形や大きさは、マンションの部屋の場合、まず自由に変更するなんてできません。
ということからすると、その変えられない各々の箱を生かしたインテリア・デザインを必然的に考えていくしかないわけです。そうは言っても、自分だけの限られた発想だけだと、頑張ってはみたとしても、結果的に案外無難な部屋で終わってしまいがちになりませんか?
で、こんなブログを書いている私としては、さまざまな映画やドラマのセットに注目してみることで、インテリア・デザインの可能性を広げていけるのではないかと思っているわけです(ずっと言いたかったことに、ようやくたどり着けました)。何といっても、映画やドラマの中のシーンでは、多様な感性を持ったプロダクション・デザイナーやセット・ディレクターなどといった方々の素晴らしい仕事を限りなく目にすることができるわけですから。
つい映画『トロン:レガシー』の話から外れて、偉そうにも「日本の住宅デザインと海外風インテリア」みたいな話を長々と書いてしまいました。
脱線ついでに、以下の写真をご覧ください。画像はFLOSのOnline Shopから引用しました。
この幻想的な異世界へと誘うかのような写真自体を目にした瞬間、心を完全に持っていかれるのは私だけでしょうか? 例として適切ではないかもしれませんが、60年代半ばのTVドラマ版の『スタートレック』で、クルーたちが未知の異星に足を踏み入れたときの場面すら連想してしまいました(もちろん、当時の『スタートレック』のセットはもっとチープで、実際にはこの写真ほど美しいわけではないですが)。
ところで、注目すべきは、写真の中のアルコのベースの部分です。本来はカララ大理石だったベースが、クリスタルになっているのにお気づきでしょうか? ベースに焦点を当てた以下の写真をご覧ください。こちらも、FLOSのOnline Shopから引用しました。
実はこのクリスタルのベースのアルコは、2022年にArcoの60周年を記念して、フロスから発売された「アルコ K 2022(Arco K 2022)」という新ヴァージョンなのです。今年(今これを書いているのは2022年12月30日)は、この写真を見た瞬間から、アルコへの憧れを強く再燃させられてしまいました。
現状の自宅には置くことのできる適切な場所を思いつかないのですが、将来的に今の家をリモデルするか増築するかなどして、もし空間が許すようになれば、このヴァージョンのアルコを置いたらどうだろうなんてことを、つい夢想してしまいます。とは言うものの、アルコ K 2022は特別仕様のリミテッド・エディションなので、すぐに在庫がなくなってしまうことは間違いありません。
ところで、今こうしてアルコ K 2022の写真を改めて見ていて思いました。先ほどの映画『トロン:レガシー』の「セイフハウス」には、元の大理石がベースのアルコ以上に、こちらの新ヴァージョンの方が、さらにぴったりきますよね。
長くなりましたので、そろそろ今回は終わりにしますが、気がついて見ると、映画『トロン:レガシー』自体の話は非常に少なくなってしまいました。続きは次回に改めて。
最後に、今回の主役となったアルコの話の締めくくりの話として、別の映画の画像を、ご覧いただきたいと思います。Film AND Furnitureの‘Arco floor lamp’から引用しました。
これはジェームズ・ボンド・シリーズの1971年の映画『007/ダイヤモンドは永遠に(Diamonds Are Forever)』からの一場面で、悪役エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドの隠れ家です。奥の方の大きなデスクの前にチャールズ・グレイ(Charles Gray)演じるブロフェルドが座っていて、その両サイドにはそれぞれアルコが置かれているのが分かりますか?
日本でのアルコが使われているインテリアを見ていると、リビング・ルームの大型のソファーの上に覆いかぶさるように置かれている場合が圧倒的に多いように思われます。ですが、こうしたデスクやテーブルを上から照らす場所にアルコを配置してもいいわけです。
というか、そもそもデザイナーのアッキーレ&ピエール・ジャコモ・カスティリオーニが1962年に描いた以下の原画を見ると、ソファーの傍らではなく、椅子に座った人物の背後から覆い被さり、テーブルの上を照らすように配置されていますからね。hiveの中の商品ページ‘flos arco floor lamp’から引用しました。
もう一つ、アルコと部屋全体のインテリアが、この上なく決まっている以下の写真をご覧ください。MID-CENTURY MODERN FREAKから引用しました。
ここではチェアに座った状態を上から照らすように、アルコが配置されていますね。まるで昔のイタリアの映画の一場面のようにすら見えますが、映っている男性はアルコのデザイナーであるアキッレ・カスティリオーニで、ミラノにある自身のスタジオでの1960年代末の写真です。
ちなみにですが、アキッレ・カスティリオーニが座っているチェアは、ピエール・ジャコモと共にデザインした「サンルカ(Sanluca)」ですね。そして、その隣にあるコーヒー・テーブルも、同じくピエール・ジャコモと共にデザインした「ロシュチェット(Rochcetto)」です。どちらもミッドセンチュリーの家具が好きな方でしたらご存じなのかもしれませんが、こうしたカスティリオーニ兄弟のデザインした60年代の個性的な家具についても、また別の機会に取り上げてみたいと思っています。
先ほども言いましたが、次回もまた映画『トロン:レガシー』のインテリアの話を続けます。
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