ブログについて

映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。


※ご質問は伊泉龍一 公式サイトよりお願いします。伊泉龍一公式サイトはこちら

執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)

ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。


60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』


ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』



デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』



サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』



ジェイソン・ヘラー 著
『ストレンジ・スターズ ―デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』



ピーター・ビーバガル 著
『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ -いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』

TVドラマ『ウエストワールド』の中の建築(1)――建築家ウォレス・カニンガム設計の「クレセント・ハウス」

インテリア  建築  テレビ・シリーズ   / 2022.10.07

 HBO製作のドラマ『ウエストワールド(Westworld)』を、ついつい何度も再鑑賞したくなります。 理由は、話が面白いからというよりも(もちろん話も面白いのですが)、シーズン3以降の舞台が変わってから登場する建築やインテリアの素晴らしさに目を奪われてしまうからなのです。

 もしかしたらシーズン1ないしシーズン2で挫折された方がいらっしゃるかもしれません(かく言う私自身も一旦挫折しました)が、もし近未来を舞台にしたSFが嫌いでないなら、ぜひシーズン3をちらっとでも見てください。まったく違う予想を超えた展開が待っていてがぜん面白くなりますので(シーズン1だけえをご覧になった方に言うと、単なるアンドロイドものではなくなっていきます)。

 ところで、シーズン3の背景となる近未来の舞台は、CGIだけではなく、かなり多くの実在の建物や場所も使われているようです。そこで、ちょっと調べてみることにしました。

 もし『ウエストワールド』を観ていない方、あるいはシーズン3にたどり着く前に挫折した方は、以下でシーズン3のトレーラーをぜひともご覧になってみてください。

ドラマ『ウェストワールド シーズン3』のトレイラー

 トレイラーはいかがでしたでしょうか? 背景に注目していただくと、このトレイラーの映像だけでも、目を奪われる建築やインテリアが満載じゃないですか?

 しかも、このトレイラーの中盤あたりからは、1988年にビルボード・トップ100の一位となったガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)の大ヒット曲「スウィート・チャイルド・オ・マイン(Sweet Child o’ Mine)」のカヴァーが流れてきますが、その旋律につられて、ますます本編への期待感も高められていきます。

 そのピアノのイントロをバックに、エヴァン・レイチェル・ウッド(Evan Rachel Wood)演じるドロレス・アバーナシーが口にする「ゲームの終わりにようこそ(Welcome to the end of the game)」という一言で、はっとさせられたかと思うと、その後、魅惑的かつ近未来的な建物、車、ドローン、ロボットなどが次々と映し出されていきます。そうした中、背後に流れ続けている「スウィート・チャイルド・オ・マイン」のピアノの音に電子音が加わってきたかと思うと、その後、さらに劇的なアレンジへと展開し、クライマックスを迎えるわけです。少なくとも私のようなタイプの視聴者の心を、巧みに操るのに十分過ぎるほど見事によくできたトレイラーです。

 私だけでなく、近未来を舞台にしたSFが大好きな人だったら、このトレイラーで散見される素晴らしいショットの数々を一度目にしてしまったら最後、すぐにでも本編を観たくて観たくてたまらなくなるのではないでしょうか?

 SF好きなのにもかかわらず、シーズン3にたどり着く前に挫折してしまった方へ自信を持って言っておきます。がんばってシーズン3までフォローしてください。SF魂(?)を激しく揺り動かしてくれる興奮に満ちた世界が待っていますので。

 さて、今回の本題に入るとしましょう。まずは『ウエストワールド』シーズン3の第1話の冒頭から舞台となる家をご覧ください。以下は実際の『ウエストワールド』の場面です。画像は、if it’s hip, it’s hereの中の記事’That Incredible House In Westworld’s Season 3 Premiere’から引用しました。

『ウエストワールド』シーズン3の冒頭に登場する家

 これら『ウエストワールド』の中の場面は、アメリカの建築家ウォレス・カニンガム(Wallace Cunningham)が設計し、2003年に建てられたカリフォルニア州のネプシニータスにある住居、「クレセント・ハウス(Crescent House)」で撮影されたとのことです。

 では、実際のクレセント・ハウスの外観をご覧ください。if it’s hip, it’s hereの中の記事‘That Incredible House In Westworld’s Season 3 Premiere‘から引用しました。

クレセント・ハウスの外観

 見る者の目を一瞬で覚まさせるような堂々たる外観じゃないですか? 特にモダニズムの極みのようなシャープな外観の家がお好みの方だったら、間違いなく目を輝かせてしまうのではないかと思います。

 別の角度からのショットもご覧ください。以下は、Dirtの中の記事‘Encinitas’ Iconic Crescent House from ‘Westworld’ Is Up for Grabs’から引用しました。

クレセント・ハウスの外観

 庭の方からは、全面の窓ガラスを通して、照明をつけた室内がくっきりと見えますね。言うまでもなく、物はガラスを通すとさらに美しく見えますので、夜の時間帯はワインでも飲みながら、外から家の中の眺めをいつまでも楽しめそうです。

 さらに近づいた別の角度からの写真もご覧ください。以下の画像は、前述の記事「That Incredible House In Westworld’s Season 3 Premiere」から引用しました。

クレセント・ハウスの三日月形のプール

 クレセント・ハウス(Crescent House)という名前の通り、邸宅内のプールが、ご覧のように三日月(crescent)の形になっています。

 今度は、『ウエストワールド』の室内をご覧ください。画像は、if it’s hip, it’s hereの中の記事‘That Incredible House In Westworld’s Season 3 Premiere’から引用しました。

『ウエストワールド』に映っているクレセント・ハウスの室内

 夜のシーンなので全体的に少し見づらいかもしれませんが、向かって左上にベッドルームが映っているのは分かりますよね。このベッドルームの現実の家の方の写真をご覧ください。、Dirtの中の記事‘Encinitas’ Iconic Crescent House from ‘Westworld’ Is Up for Grabs’から引用しました。

クレセント・ハウスのベッドルーム

 『ウエストワールド』の実際の本編でも夜のシーンしか映らなかったので、観ていたときは、まったく解放的な感じの部屋とは思いもしませんでした。なので、これは本当に驚きました。なんとも実際には美しい海を眺められる、とても明るいベッドルームだったんですね。

 室内の他の場所も気になると言う方は、各地の豪邸を紹介しながら丁寧に解説してくれているEnes Yilmaze氏が、youtubeにアップしている以下の動画で、その細部を見ることができます。よろしければ、どうぞご覧ください。

クレセント・ハウス

 上の動画の紹介によると、クレセント・ハウスは、4ベッドルーム、6バスルーム、内部空間は6,329スクエア・フィート(約587平米)、敷地は0.43エーカー(約1,740平米)だそうです。

 ところで、動画にも映っていましたが、個人的に最も目を奪われた室内の場所が、以下の階段です。改めてじっくりとご覧ください。画像は、 if it’s hip, it’s hereの中の記事‘That Incredible House In Westworld’s Season 3 Premiere’

クレセント・ハウスの階段

 未来的かつ太古の動物の骨格をも思わせるような曲線を描く斬新なデザインです! しかも、ここは全面のガラスではなく、縦のスリットから光が差し込むようになっています。それがまたスケルトンな階段のデザインをよりいっそう引き立てていますね。

 もしこんな家に引っ越すことができたら、しばらくの間は、この階段の上り下り自体が楽しくて、意味もなく何度も往復してしまいそうじゃないですか? 

 ここでウォレス・カニンガムの設計した別の家も、ご覧ください。画像は、『Livingetc: Modern Home Design And Style』内のLotte Brouwer氏による記事「Inside Alicia Keys’ ultra modern home – you might recognise it from the Iron Man movie」から引用しました。

レイザー・ハウス(Image credit: Gary Kasl)

 しょうもない言い方をあえてしますが、この家、マジですごすぎませんか? とりわけ、このアングルからの形は、文字通りにもエッジが利いています。もし実物を見たら、その迫力を前に、畏怖すら感じてしまいそうです。

 この「レイザー・ハウス(Razor House)」と名付けられた家は、映画『アイアンマン(Iron Man)』でロバート・ダウニー・ジュニア(Robert Downey Jr)演じる主役の大富豪トニー・スタークが暮らす大邸宅に着想を与えたのではないか、ともしばしば言われてきました(実際には、アメリカの建築家ジョン・ロートナー(John Lautner)が設計し、1972年にメキシコのアカプルコに建てられた「ホーム・アランゴ(home Arango)」という住宅がモデルになったようです。これについては機会を改めて)。

 それにしても、一体誰がこんな家に住んでいるのか? ふと、そう思ったりしませんか?

 realestate.com.auの記事 ‘Alicia Keys turns stunning clifftop mansion into ‘Dreamland’‘によると、なんと再婚したアメリカのシンガーソングライターで女優のアリシア・キーズとラッパーでプロデューサーのスゥイズ・ビーツが、このレイザー・ハウスを2019年に購入したそうです。

 ウォレス・カニンガムが設計した家は、今回のクレセント・ハウスやレイザー・ハウス以外のどれを見ても、全体にコンクリートとガラスを使用し、直線のラインが強調されたものが多く、まさしくモダニズム建築の延長にあることが感じられます。そして、そこに大胆な曲線が加えられていることで、ウルトラモダンとも言うべき未来的住宅になっています。

 以下の動画では、ウォレス・カニンガム設計のその他の建物を見ることができます。よろしければ、どうぞご覧ください。

ウォレス・カニンガム設計の建築

 自分が住めるわけではないにもかかわらず、こうした驚くべき建物の数々を、ただぼんやり眺めているだけで、なぜか不思議と満ち足りたような気持になっていくのは、私だけでしょうか?

 今回は『ウエストワールド』シーズン3の最初に出てくる建築家ウォレス・カニンガム設計のクレセント・ハウスを見てきましたが、いかかでしたでしょうか? 

 最初に載せたシーズン3のトレイラーにも映っていたように、『ウエストワールド』には、たくさんの目を奪われる建築やプロダクトなどがたくさん出てきます。次回はシーズン3の多くの場面を撮影したシンガポールへと目を向けてみたいと思います。

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