ブログについて

映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。


※ご質問は伊泉龍一 公式サイトよりお願いします。伊泉龍一公式サイトはこちら

執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)

ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。

『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』

ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』


60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』


ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』



デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』



サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』



ジェイソン・ヘラー 著
『ストレンジ・スターズ ―デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』



ピーター・ビーバガル 著
『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ -いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』

映画『ウェインズ・ワールド』のクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」とAMCのペイサーについて

映画  音楽  コマーシャル映像  車・バイク   / 2023.06.21

 前回の最後に映画『ウェインズ・ワールド(Wayne’s World)』のトレイラーを紹介しましたが、その中でイギリスのロック・バンド、クイーン(Queen)1975年のアルバム『ア・ナイト・アット・ジ・オペラ(A Night at the Opera)』の曲「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」が使われていました。

 「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒット曲だということは知っていたものの、改めて調べてみて知りましたが、発売当時はUKシングル・チャートで9週間も1位だったんですね。しかも、1991年のシンガーのフレディー・マーキュリー(Freddie Mercury)の死後、再びUKシングル・チャートで5週間1位になっています。また、USビルボード・ホット100では発売当時、最高9位でしたが、1992年の映画『ウェインズ・ワールド』で使われた後、最高2位に達していたんですね。

 前回に引き続き、映画『ウェインズ・ワールド』の中で使われている音楽を見ていきますが、今回はクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が使われている場面を以下の動画でご覧ください。

映画『ウェインズ・ワールド(Wayne’s World)』の中のクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」が使われている場面

 これぞ映画『ウェインズ・ワールド』をまさしく象徴する最も有名なシーンです。車のオーディオ・デッキにカセット・テープを差し込んで音楽を聴くというのも、今改めて見ると、今はなき古き時代の音楽の楽しみ方を思い出させてくれていいですね。

 ところで、途中の49秒あたりで、車を止めて、マイク・マイヤーズ(Mike Myers)演じるウェイン・キャンベル(Wayne Campbell)とダナ・カーヴィ(Dana Carvey)演じるガース・アルガー(Garth Algar)が、街中でシーン・サリヴァン(Sean Sullivan)演じる友人のフィル(Phil)を見つけて車から降りていくと、「ボヘミアン・ラプソディ」がいったん消えます。ですがその後、「フィル、ここで何やってんだ?」と話しかけて、車に乗せたところから再び「ボヘミアン・ラプソディ」の続きが始まります(途中でやめてしまった方は、どんどん盛り上がっていって面白くなっていくので、ぜひとももう一度最後までご覧ください)。

 クイーンのファンの方に怒られることを覚悟で言います。この映画を観る前は、「ボヘミアン・ラプソディ」という曲のどこが良いのか全く理解できませんでした。「歌詞も意味不明だし、真面目に聴く気になれない変な曲」としか思っていませんでした。

 ですが、この映画を観た後、遅ればせながら「ボヘミアン・ラプソディ」を好きになりましたよ。というのも、ウェインやガースたちが楽しそうに口パクしているの見て、「なるほど! こうやって楽しむ曲だったんだ!」と、この曲の聴き方を学びました。

 それ以来、この曲を聴くたびに、「ママミヤー」とか「ガリレオー、ガリレオー、ガリレオー」と叫んだり、ウェインやガースがやっていたのと同じ曲の場面でヘッド・バンキングしたりしながら、楽しめるようになりました。とはいえ、実際の車の運転中に、激しくヘッド・バンギングをするのは危険ですので注意しなければなりませんね。

 「ボヘミアン・ラプソディ」から話が外れますが、この場面でガースが運転しているスカイブルーの車のことが気になりませんか? 『ウェインズ・ワールド』の中では「マースモーブル(mirthmobile)」と呼ばれ、同映画の中で何度も登場します。もちろん、アメリカの昔の車に詳しい方だったら、その丸みを帯びた形状と広いガラス面という独特な形から、一瞬でお分かりのことと思われます。そう、クライスラーに吸収されて今はなくなってしまったアメリカン・モーターズ・コーポレーション(AMC)の1976年製のペイサー(Pacer)です。

 現在からするとペイサーはかなりレトロシックに見えますが、当時としては大胆で先進的なデザインでした。その頃の一般的なアメリカ車と言えば、車体が長いのが定番だったことから考えて見ると、いかにペイサーが挑戦的なデザインだったかがお分かりいただけることと思います。

 HAGERTYのJeff Peek氏の記事‘Love it or hate it, the AMC Pacer is an automotive legend’によると、1975年に発売された時のペイサーは「未来的、大胆、ユニーク」とも評され、「金魚鉢(the fish bowl)」という呼び名でも知られるようになったようです。

 また、映画で使用されたペイサーは、1991 年に映画が制作された際、工場出荷時のイエローの塗装を、側面に炎が入ったスカイ・ブルーに塗り直して仕上げられたようです(HOTCARSのDAVID RHEE氏の記事‘Here’s What Makes The ‘Wayne’s World’ AMC Pacer An Excellent Collector Vehicle’を参照)。

 ところで、ヒストリーで2009年から続いている大人気のリアリティ番組『アメリカお宝探偵団ポーンスターズ(Pawn Stars)』は、ご覧になられていますでしょうか? というのも、同番組の2015年に放送されたシーズン12のエピソード2の「パーティー・オン、ポーン(Party on, Pawn)」に、実際に映画に使われたペイサー、すなわち「マースモーブル」が登場しました。

 このエピソードは観たことがなかったので調べてみたら、ありがたいことにも、そのシーンがyoutubeにアップされていました。以下に掲載しておきますので、よろしければどうぞ。

『アメリカお宝探偵団ポーンスターズ(Pawn Stars)』のシーズン12のエピソード2の「パーティー・オン、ポーン(Party on, Pawn)」に登場した映画『ウェインズ・ワールド(Wanes World)』で使われたのAMCの1976年製のペイサー(Pacer)

 『アメリカお宝探偵団ポーンスターズ』のリック・ハリソン(Richard Kevin “Rick” Harrison)がペイサーを目にした瞬間、「シュウィング(Schwing)!」と言ってましたね。その後、車の周りを歩いて見て「これはものすごく素晴らしい。パーティ・オン(Party On)」と言って笑っていました。

 映画『ウェインズ・ワールド』のファンの方ならご存じの通り、「シュウイング」も「パーティ・オン」も、同映画の中でウェインとガースによって何度も使われた後、映画を観た人たちの間で大いに流行した言葉です。

 この動画の中で、ペイサーを売りに出そうとしているオーナーの男性は『ウェインズ・ワールド』を実際には観たことがなく、クリップしか観ていないと言っていました(西部劇の方が好きだと言ってました)。それに対して、巧みな交渉を行うリックは希望金額をオーナーに尋ねる前に、「AMC ペイサーは、これまでに作られた車の中で最も醜い車の 1 つと考えられている」と述べて車の価値を低く見させようとしていました。さらにリックは、この車が20年以上も手付かずのままで状態も悪いと指摘します。

 で、結果はと言うと、オーナーは 15,000 ドルを希望しましたが、最終的には 9,000 ドルで交渉が成立し、リックは嬉しそうに笑っていました。今回も、かなりうまく値切ることができました。

 ところで、リックが手に入れた「マースモーブル」は、その後、どうなったのでしょう? 誰か買い手がついたのでしょうか?

 そのことが気になったので調べてみました。INQUISITRのGeorgia Makitalo氏の記事‘‘Pawn Stars’ Sell Pumped Up ‘Wayne’s World’ Car For Record Amount’によると、スピーカーとステレオのアップグレード以外、全ての部分を映画で使用された時の状態へ忠実に修復ないし再仕上して、2016年にラスベガスで開催された、あの有名なオークション、バレット=ジャクソン(Barrett-Jackson)に出品したとのこと。で、その際の最終的な落札価格はというと、37,000ドルでした。

 つまり、リックは9,000ドルで購入し、37,000ドルで売ったわけです。ということは、ポーンスターズにとって、これはまずまず良い買い物だったのでしょうか? もちろん、修復費用にいくらかかったかによりますから、実際に利益がどれほど出たかは定かではありませんが。

 さらにその後の「マースモーブル」の行方を追っていくと、2022年の1月22日から30日の間、アリゾナ州スコッツデールで開催されたバレット=ジャクソンのオークションで再び売りに出されていたことが分かりました。

 そのときの実際のオークション会場に登場する「マースモーブル」の姿を、以下の動画でご覧ください。

2022年のアリゾナ州スコッツデールで開催されたバレット・ジャクソン(Barrett-Jackson)のオークションに出品された映画『ウェインズ・ワールド(Wanes World)』で使われたのAMCの1976年製のペイサー(Pacer)

 さて今回の結果はというと、なんと前回のほぼ2倍の価格71,500ドルで落札されたそうです(autoblogのBEN HSU氏の記事”Wayne’s World’ AMC Pacer: Would you pay this much?’より)。やはりこうした特別な車は、値段が上がっていくんですね。

 とはいえ、71,500ドルです。つまり、大富豪でなくても、車にお金をかけるのをいとわない車好きのコレクターだったら、買えない値段ではないですね。

 それにしても、もしもこれを映画ファンの方が手に入れたとしたら、どうでしょう? まずは「シュウイング!」と叫んだ後、友人たちを呼んで中に乗り込み、「ボヘミアン・ラプソディ」をかけて声を合わせて歌ったり叫んだり、ヘッド・バンギングしたりして、きっと先ほどの映画の場面を再現しようとするのではないかと思われます。

 今回は、「マースモービル」の話をつい書いてしまったせいで、肝心の「ボヘミアン・ラプソディ」の話にたどり着いていませんが、続きは次回にします。

 最後に、1975年11月にアメリカで放映されたAMCの76年製ペイサーのコマーシャル映像をご覧ください。外見はコンパクトなのに中へ入ると広いということで、ペイサーは「ワイドなスモール・カー」として売り出されていました。そこを面白く表現しているコマーシャル映像です。

1975年11月に放映されたAMCの76年製ペイサー(Pacer)のコマーシャル映像

 最初の場面では、ラグジュアリーな大型車に乗っているかのように見えますが、すぐに停車して、乗っていた二人が車から降りると外側を覆っていたカバーを外し始めます。すると、なんと中からペイサーが現れました!

 先ほども述べたように、次回は映画『ウェインズ・ワールド』と「ボヘミアン・ラプソディ」の続きを書きますが、加えて2018年のクイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディー』についても少し触れてみたいと思います。

 それと、前々回の記事の終わりにレッド・ツェッペリンの「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」(天国への階段)の訴訟問題についても書くと言ったまま放置していますが、もうちょっと後で書くきますね。

 

 

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