ブログについて

映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。


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執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)

ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。

『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』

ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』


60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』


ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』



デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』



サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』



ジェイソン・ヘラー 著
『ストレンジ・スターズ ―デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』



ピーター・ビーバガル 著
『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ -いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』

映画『ウェインズ・ワールド』のギャグの場面から消されてしまったレッド・ツェッペリンの「天国への階段」のギターのイントロ

ビデオ・ゲーム  映画  音楽   / 2023.06.16

 クラシック・ロックのファンの方なら、歴史に残る数々の名曲を生みだしてきたイギリスの70年代のハード・ロック・バンド、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)の偉大さを否定する人は、ほとんどいないでしょう。

 今回は、そんなレッド・ツェッペリンの数ある名曲の中でも、ひと際燦然と輝く「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン(Stairway to Heaven)」(天国への階段)の話です。

 と言っても、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」の尽きせぬ魅力を解説するというのではなく、このブログの趣旨に沿って、同曲が映画の中で使われている場面に注目してみたいと思います。

 ということで、前回に予告した通り、ペネロピ・スフィーリス(Penelope Spheeris)監督の1992年のコメディ映画『ウェインズ・ワールド(Wayne’s World)』の中で「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」(天国への階段)が使われている場面を観ていきます。

 ですが、その前に「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」を、改めて聴いていただいた方がいいですね。ご存じない方も当然いらっしゃるかと思いますので。

レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)の曲「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン(Stairway to Heaven)」(天国への階段)

 半音階で下降していくアコースティック・ギターのアルペジオから始まり、中世的かつ牧歌的な雰囲気のメロディーを奏でるリコーダーが重なってくる静穏なイントロが一分近く続いた後、シンガーのロバート・プラントの「輝く全てのものを黄金だと信じている女性がいる。そして彼女は天国への階段を買おうとしている(There’s a lady who’s sure all that glitters is gold/And she’s buying a stairway to heaven)」という意味深な歌詞が聴こえてきます。

 一瞬にして聴き手の心を捉えるロバート・プラントの独特の声の質感と謎めいた歌詞によって耳を奪われ、ウェールズのフォークロア的な世界へ誘われ、思わず目を閉じて聴き入りたくなります(この曲は、水道も電気もトイレもないウェールズのコテージで書かれたという話が、かつてレッド・ツェッペリンの伝説の一つとなっていました)。そして、4分以上経って中盤を過ぎたあたりからドラムが加わり、やがて「スリリング」という表現がまさしくぴったりのロック史上最も有名なギター・ソロの一つへと至るわけです。

 「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」を何度も聴きたくなるのは、ジミー・ペイジのそのギター・ソロを聴きたいからだとギタリストの友人が昔よく言っていましたが、確かにその気持ちも分かります。

 実際、アメリカで最も有名なギター雑誌Guitar Worldの2009年1月29日の記事’50 Greatest Guitar Solos’では、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」のジミー ペイジのギター・ソロが、ロック史の中の最も偉大なギター・ソロの1位に選ばれました。同記事では、ペイジのギター・ソロを次のようにも評しています。

 「ジミー・ペイジがギタリストたちの中のスティーヴン・スピルバーグだとすれば、「ステアウェイ」は彼の『接近遭遇(Close Encounters)』だ」。

 この譬え、言いたいことは分かりますし、面白いですが、正直なところ、本当に適切な譬えなのかどうかは微妙な気がします。 要するに、映画界で言えば、スティーヴン・スピルーバーグ監督に比するほどジミー・ペイジが素晴らしいということですよね。で、1977年公開の『接近遭遇』(正確にはClose Encounters of the Third Kind(『第三種接近遭遇』)、日本公開時の題名は『未知との遭遇』)がスピルーバーグ監督の最高傑作であるのと同じように、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」がジミー・ペイジの最高のギター・ソロだと言っているわけですよね。

 でもですよ、どうせ映画界に重ね合わせるなら、スピルバーグよりもコッポラとかに譬えて、こう言った方がしっくりきませんか?「ジミー・ペイジがギタリストの中のフランシス・フォード・コッポラだとすれば、「ステアウェイ」は彼の『ゴッドファーザー』だ」。

 ついどうでもいい話をしてしまいました。ちなみに、同記事の中で選ばれた2位から9位のギター・ソロは以下の通りです。表記は、ギタリスト、曲名、バンド名、その曲が収録されているアルバム名、リリースされた年の順です。

2位 エディ・ヴァン・ヘイレン(Eddie Van Halen)、「イラプション(Eruption)」――ヴァン・ヘイレン(Van Halen)、『ヴァン・ヘイレン(Van Halen)』(1978)

3位 アレン・コリンズ(Allen Collins)とゲイリー・ロッシントン (Gary Rossington)、「フリー・バード(Free Bird)」――レーナード・スキナード、『レーナード・スキナード・プロナウンスド・’lĕh-‘nérd ‘skin-‘nérd(Lynyrd Skynyrd pronounced ‘lĕh-‘nérd ‘skin-‘nérd)』(1973)

4位 デヴィッド・ギルモア (David Gilmour)、「カンファタブリ・ナム(Comfortably Numb)」――ピンク・フロイド(Pink Floyd)、『ザ・ウォール(The Wall)』(1979)

5位 ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)、「オール・アロング・ザ・ウォッチタワ――(All Along the Watchtower)」――ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス(The Jimi Hendrix Experience)、『ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス・エレクトリック・レディランド(The Jimi Hendrix Experience Electric Ladyland)』(1968)

6位 スラッシュ (Slash)、「ノウヴェンバー・レイン(November Rain)」――ガンズ・アンド・ローゼズ( Guns N’ Roses)、『ユーズ・ユア・イリュージョンI(Use Your Illusion I)』(1991)

7位 カーク・ハメット(Kirk Hammett)、「ワン(One)」――メタリカ(Metallica)、『……アンド・ジャスティス・フォー・オール(…And Justice for All』(1988)

8位 ベン・フェルダー、ジョー・ウォルシュ(Ben Felder, Joe Walsh)、「ホテル・カリフォルニア(Hotel California)」――イーグルス(The Eagles)、『ホテル・カリフォルニア( Hotel California)』(1976)

9位 ランディ・ローズ、「クレイジー・トレイン(Crazy Train” (Randy Rhoads) 」ーーオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne) 、『ブリザード・オブ・オズ(Blizzard of Ozz)』(1981)

10位 エリック・クラプトン(Eric Clapton) 、「クロスローズ(Crossroads)」――クリーム(Cream)、『ホイールズ・オブ・ファイアー(Wheels of Fire)』(1968)

 クラシック・ロックが大好きな方だったら、どのギター・ソロも素晴らしいことに異論はないでしょう。ですが、その順位となると当然のことながら、大きく意見が分かることは間違いないと思います(完全に私自身の個人的な好みを言えば、この10曲の中で順位をつけるとすれば、5位のジミ・ヘンドリックスの「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」を迷うことなく1位にします)。

 ところで、2023年の今からすると、上記のGuitar Worldの記事は2009年のものなので少々古いですが、比較的最近(2017年10月6日)のNMEのRebecca Schiller氏の記事(50 greatest guitar solos of all time’(史上最も偉大なギター・ソロ)」で見ると、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」は1位ではなく2位となっていました。

 では、こちらでの1位はなんだったのかというと、ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)の「スウィート・チャイルド・オブ・マイン(Sweet Child o’ Mine)」の中でのスラッシュ(Slash)によるギター・ソロでした。ついでに、2位から10位までを以下に紹介しておきます。

2位 レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン (Stairway to Heaven)」

3位 ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)、「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー(All Along the Watchtower)」

4位 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against The Machine)、「キリング・イン・ザ・ネイム(Killing In The Name)」

5位 ミューズ(Muse)、「ナイツ・オブ・サイドニア(Knights Of Cydonia)」

6位 ニルヴァーナ(Nirvana)、「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット(Smells Like Teen Spirit)」

7位 レディオヘッド(Radiohead、「ザ・ベンズ(The Bends)」

8位 チャック・ベリー(Chuck Berry)、「ジョニー・B・グッド(Johnny B. Goode)」

9位 レディオ・ヘッド(Radiohead)、「パラノイド・アンドロイド(Paranoid Android)」

10位 ピンク・フロイド(Pink Floyd)、「シャイン・オン・ユア・クレイジー・ダイアモンド (Shine On you Crazy Diamond)」

 だいぶん順位が違いますね。先ほどのGuitar Worldの記事の方では、60年代と70年代の曲が上位を占めていました。ですが、こちらのNMEの記事ではレディオ・ヘッド、ニルヴァーナ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの曲ははいずれも90年代ですし、ミューズの「ナイツ・オブ・サイドニア」は2006年の曲ですので、クラシック・ロックの割合が減っています。

 それでも、ジミ・ヘンドリックスの「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」は健在です。しかも順がさらに上がって3位です。せっかくなので、ここで実際にジミ・ヘンドリックスの「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」を、ぜひお聴きください。9秒あたりで突如ギターがうなりを上げますが、もうその瞬間からエレクトリック・ギターという楽器が持つポテンシャルの一つの極致を思い知らされます。

ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)の「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー(All Along the Watchtower)」

 ジミ・ヘンドリックスのプレイを見ていつも思いますが、まるでギターが本人の体の一部になってしまっているかのようです。悲しいときに顔が自然と悲しい表情となり、嬉しいときに顔が自然と嬉しい表情になるのと同じように、人間とギターの間に隔たりがなく、前者の情動がそのまま後者の音の表情に現われているとでも言えばいいのでしょうか。

 他のギタリストたちが神妙な面持ちで真剣にプレイにしているのとは対照的に、ジミ・ヘンドリックスは、いつだって優雅かつ楽しみながら易々とプレイしているように見えます。まるで練習など必要なく、ギターを弾くことに一切苦労したことなどないのではないか、とすら思えてしまいます。

 こうした点に関して言えば、先ほどのGuitar Worldの記事の方で2位になっていたエディ・ヴァン・ヘイレンのプレイを見ても、同じ印象を受けます。

 今思いつきましたが、改めて今度、このジミ・ヘンドリックスの「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」が映画で使われている印象的な場面について、少し書いてみたいと思います。それとガンズ・アンド・ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」の方も映画に登場するちょっと面白い場面について、その後で取り上げてみたいと思います。

 さて、本題の映画『ウェインズ・ワールド』の件です。まずは問題の場面をご覧ください。

映画『ウェインズ・ワールド(Wayne’s World)』の中のレッド・ツェッペリンの「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」を使ったギャグの場面

 ここのギャグの意味は分かりますか? 映画『ウェインズ・ワールド』をご覧になっていない方のために、ちょっと解説しておきますね。

 この場面は、マイク・マイヤーズ(Mike Myers)演じるウェイン・キャンベル(Wayne Campbell)が、ずっと欲しくてしょうがなかったフェンダーのストラトキャスターを試すために、楽器店に入ります。そして、彼がギターを手に取って音を鳴らしたところ、店員が彼を制し、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン禁止(No Stairway to Heaven)」と書かれた標識を指差します。そして、ウェインはハッと息を飲んだ顔を画面の方に向けて「No Stairway to Heaven, Denied!(ステアウェイは禁止だって。断れらちゃったよ!)」と叫ぶわけです。

 この場面は、アメリカの楽器店の従業員や楽器店によく出入りする人たちには、よく分かるギャグのようです。というのも、かつてアメリカの楽器店では、ギターを少し弾けるようになったアマチュア・ギタリストがやって来ると、決まって「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン(天国への階段)」を自慢げに演奏していたようです。もちろん、楽器店の従業員からすると、あまりにも頻繁にそればかりなので、「またかよ」とうんざりするわけです。ということからすると、この場面は、楽器店の従業員の方々からは爆笑とともに強い共感を呼んだことは間違いないですね。

 このギャグはいまだに有効なようで、映画『ウェインズ・ワールド』の最初の公開から30年以上経った今(2023年6月16日)もなお先ほどの場面にちなんで作られた「No Stairway to Heaven」の標識が、実際に販売されています。Amazon.comにも以下の商品が売ってました。

映画『ウェインズ・ワールド』にちなんで作られて販売されている「ノー・ステアウェイ・トゥ・ヘヴン(No Stairway to Heaven)」の標識

 ちなみに、GQのScott Meslow氏の記事‘”No Stairway! Denied!” The Inside Story of Wayne’s World’s Most Unintentionally Complicated Gag’によると、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン(天国への階段)」以外にも、「スイート・ホーム・アラバマ(Sweet Home Alabama)」、「スモーク・オン・ザ・ウォーター(Smoke on the Water)」、「ブラックバード(Blackbird)」を禁止のリストに加えるべきだと「あるギター フォーラム」が提案しているそうです。

 念のために言うと、「スウィート・ホーム・アラバマ」は、アメリカのロック・バンド、レーナード・スキナード(Lynyrd Skynyrd)の1974年のアルバム『セカンド・ヘルピング(Second Helping)』の中の曲です。「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は、イギリスのロック・バンド、ディープ・パークル(Deep Purple)の1972年のアルバム『マシーン・ヘッド(Machine Head)』の中の曲です。「ブラックバード」はビートルズの1968年のアルバム『ザ・ビートルズ(The Beatles)』(通称『ホワイト・アルバム』)の中の曲です。

 ああ、なるほど分かりますよ、これらを弾きたくなる気持ちが。特にレーナード・スキナードの「スウィート・ホーム・アラバマ」なんて弾いていて、すごく気分がいいんですからね(昔自分でもその曲のギターをちょこっと練習したことがあります)。

 70年代の日本ではディープ・パープルが非常に人気があったようなので、日本国内のあちこちの楽器店からかつて聴こえてきた曲の一つと言えば、それらの中でもとりわけ「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だったのかもしれませんね。

 ところで、アメリカのハーモニクス(Harmonix)社によって開発され、2005年にプレイステイション2用に発売された『ギター・ヒーロー(Guitar Hero)』というビデオ・ゲームをご存じでしょうか?

 ギターの形をしたコントローラーを使って、プレイヤーがロック・ミュージックのギターの演奏をシミュレートするゲームです(1999年にリリースされた日本のコナミのアーケード・ビデオ・ゲーム「GUITARFREAKS(ギターフリークス)」から着想を得て作られました)。

 『ギター・ヒーロー』をプレイしたことがないけど、ロックは大好きという方、機会があれば、ぜひ一度プレイしてみてください。楽しすぎてやめられなくなるはずです。何と言ってもロック史に残る名曲の数々を、楽器がまったくできない人でもギタリストになった気分で爽快にプレイできるんですよ。

 正直に告白すると、私自身も十分すぎる大人になっていたにもかかわらず、このゲームが出た当時、うかつにもはまりまくってしまいました。

 言い訳をすると、ロック好きの弟がいまして、ある日の夕方に『ギター・ヒーロー』を携えて自宅に遊びにきました。そして、勝手にテレビに接続して『ギター・ヒーロー』を始めたわけです。で、そこからクラシック・ロックの懐かしい名曲の数々が聴こえてくるわけですから、その誘惑に引き寄せられてしまうのはどうしようもありません。

 そして、その日からしばらくの間、いい年の大人二人がやめられなくなり、疲れ切ってくらくらなるまで、毎日遊んでいたというダメな思い出があります。『ギター・ヒーロー』が好きだった方なら共感してくださると思いますが、とにかく異様な中毒性のあるゲームなんですよ。

 何で『ギター・ヒーロー』の話をしているのかというと、先ほどのアメリカの楽器店でアマチュア・ギタリストたちが好んで頻繁に演奏していたディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」とレーナード・スキナードの「スウィート・ホーム・アラバマ」も、『ギター・ヒーロー』のシリーズの中に含まれていたことを思い出したからです。

 ということで、ここではディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の方を『ギター・ヒーロー』のプレイ画面とともにご覧ください。

ビデオ・ゲーム『ギター・ヒーロー(Guitar Hero)』でディープ・パープル(Deep Purplee)の「スモーク・オン・ザ・ウォーター(Smoke on the Water)」をプレイしている画面

 久しぶりに見ましたよ、この画面! 見ているだけで、かつての興奮がかきたてられ、無性にプレイしたくなります。ですが、今は『ギター・ヒーロー』を持っていないので、プレイしたくてもできません。

 ところで、非常に残念なことにも『ギター・ヒーロー』のシリーズのどこにもレッド・ツェッペリンの曲は含まれていませんでした。ふと考えて見ると、製作側としては、当然のことながらレッド・ツェッペリンの曲を含めたかったはずですよね。だって、そもそも「ギター・ヒーロー」ですよ。ジミー・ペイジが入っていないとおかしいじゃないですか。例えば、先ほどのランキングの中のミューズの「ナイツ・オブ・サイドニア」もニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」もメタリカの「ワン」も入っていますし、ジミ・ヘンドリックスだって「パープル・ヘイズ(Purple Haze)」を始めとして数曲入っています。

 それなのに、なぜレッド・ツェッペリンだけ入っていないのか? このブログの以前の記事でレッド・ツェッペリンの曲を使用するライセンス料が、かつては異常に高かったという話を書いたことがあります。ということからすると、ツェッペリン側が『ギター・ヒーロー』に対しても高額を提示して、結局折り合いがつかなかったのでしょうか? ちょっと気になったので、このことについて調べて見ました。

 THE WALL STREET JOURNALのNICK WINGFIELD氏とETHAN SMITH氏の記事’Aerosmith Stars in Guitar Hero Videogame’によると、ジミー・ペイジを始めとするレッド・ツェッペリン側が、その再三のオファーを断ったとのことです。その理由は、ゲームを製作するのに必要な手続きとして、「部外者にそのマスター・テープへのアクセスを許可する」ということが気に入らないとのことです。ジミー・ペイジのマネージャーのピーター・メンシュ(Peter Mensch)氏によると「それはお金の問題ではない」とのことです。

 なるほど、「お金の問題」ではないんですね……。何にせよ、ここでもジミー・ペイジの自分の曲へのガードの厳しさが見られます。

 日本で『ギター・ヒーロー』にはまった人がどれぐらいいるかは、調べてみたことがないのでわかりませんが、とにかく本国やヨーロッパでの『ギター・ヒーロー』の人気は爆発的で、ある種の社会現象となるほど大流行していたようです。確かに『ギター・ヒーローIII――レジェンド・オブ・ロック(Guitar Hero III: Legends of Rock)』が2007年にリリースされてしばらく経った頃、スウェーデンを旅行していた際にヨーテボリに行ったら、ショッピング街にギター・ヒーロー大会の特設会場が作られ、大勢が集まる中で壇上で熱いバトルが繰り広げられているのを目にしました。

 『ギター・ヒーロー』については、まだいろいろと書きたいことがあるのですが機会を改め、本題の映画『ウェインズ・ワールド』の話に戻ります。

 先ほどの楽器店の場面のギャグの意味は、説明した通りです。とはいえ、実際のところ、あの場面だけを見ていたら、ギャグがあまり意味をなしていないと思いませんか? というのも、ウェインのギターが「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」の音を実際にちょっとでも鳴らしたならば、店員に「ノー・ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」の標識を示されるのも分かりますが、あの映像の場面では「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」を全く演奏していません。

 この点こそが、今回の記事のタイトルとつながる話なのです。実のことを言うと、オリジナル・カットでは、ウェインが「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」を演奏していたようです。先ほどのGQの記事によると、アメリカでリリースされるどこかの時点で、ワーナー・ミュージック・グループとレッド・ツェッペリンが「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」の最初の数音さえも、一切の放送、ビデオ、または海外でのリリースも含めて権利を認めないと訴え、結果、その場面が編集されて先ほどの意味不明の音になりました。 

 これは、このブログの前回の記事で取り上げたアベル・フェラーラ(Abel Ferrara)監督の1992年の映画『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト(Bad Lieutenant)』に対するレッド・ツェッペリンからの訴訟と同様のケースですね。しかも、今回の場合は、ツェッペリン自身が録音したオリジナルの音源を使うのではなく、その曲のほんの最初の部分をウェイン自らがギターで演奏するだけです。ということからすると、さすがに厳しすぎないかと思うのは、私だけでしょうか?

 ですが、朗報です。THE DIGITAL BITSのStephen Bjork氏の記事‘WAYNE’S WORLD: 30TH ANNIVERSARY (4K UHD REVIEW)’によると、2022年にリリースされた30周年記念の『ウェインズ・ワールド』の4K Blu-Rayでは、なんとウェインがギターで「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」の最初の箇所を演奏しているヴァージョンが復元されたようです。確認したくて探してみたところ、以下の動画がアップされていました。

映画『ウェインズ・ワールド(Wayne’s World)』の中のレッド・ツェッペリンの「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」を使ったギャグの場面(オリジナル・カットを復元した2022年に4K Blu-Rayのヴァージョン)

 確かにこちらでは、「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」の最初の4音を弾いています! これは復元されて本当に良かったと思います。これでこそ、ここでのギャグの真価が発揮できますからね。

 ここまで書いてきて気づきましたが、そもそも『ウェインズ・ワールド』をご覧になっていない方もいらっしゃいますよね。ということで、最後になりますが、以下でトレイラーをご覧ください。

映画『ウェインズ・ワールド(Wayne’s World)』のトレイラー

 マイク・マイヤーズ演じるウェイン・キャンベルとダナ・カーヴィ演じるガース・アルガーが仲間たちと車の中で「ガリレオー、ガリレオー、ガリレオー」と熱唱し、楽しそうにヘッド・バンキングするトレイラーの冒頭から流れてくる曲は、イギリスのロック・バンド、クイーン(Queen)の1975年のアルバム『ア・ナイト・アット・ジ・オペラ(A Night at the Opera)』からのシングルで非常に有名な「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」ですね。

 次回は、このクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を含め、『ウェインズ・ワールド』と関連する音楽についてもう少しだけ書いてみたいと思います。

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