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ブログについて
映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。
執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)
ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。
ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』
ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』
デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』
サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』
TVドラマ『ツイン・ピークス』のジュリー・クルーズの「フォーリング」――映画『インランド・エンパイア』のクリスタ・ベルの「ポリッシュ・ポエム」
音楽 ミュージック・ビデオ テレビ・シリーズ / 2022.11.26
前回の流れで、今回はデヴィッド・リンチ監督の作品と深いかかわりのある魅惑的なドリーム・ポップ・シンガー、ジュリー・クルーズ(Julee Ann Cruise, 1956 – 2022)について、少し書いてみたいと思います。
ジュリー・クルーズが歌っている曲の中で、おそらく一般の人に最も知られているのは、デヴィッド・リンチ監督のTVドラマ『ツイン・ピークス』(1990-1991)の中のロード・ハウスのバーで歌うドリーミーな曲「フォーリング(Falling)」だと思います(前回の記事に同曲の動画を張り付けておきました)。
「フォーリング」は、1989年9月12日にワーナー・ブラザース・レコーズから発売された彼女の最初のアルバム『フローティング・イントゥ・ザ・ナイト(Floating into the Night)』からの最初のシングルです。このアルバムは『ツイン・ピークス』の音楽も担当したアンジェロ・バダラメンティとデヴィッド・リンチにがプロデュースしています。また、作曲もバダラメンティ、作詞もリンチによって行われています。「フォーリング」のインストゥルメンタル・ヴァージョンは『ツイン・ピークス』のテーマ曲としても使われていますが、それによってバダラメンティは1991年の第33回グラミー賞の最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞しています。
「フォーリング」のインストゥルメンタル・ヴァージョンが流れる『ツイン・ピークス』のイントロは、以下でご覧ください。
『ツイン・ピークス』にはまった人は、毎回ドラマのイントロで、この催眠性のある音楽が流れるのを聴きながらデヴィッド・リンチ・ワールドへ引き込まれていくわけですね。
それにしても『ツイン・ピークス』というドラマは、ご覧になった方なら分かるように、当初のストーリー展開だけに注目してしまうと、いわゆるソープ・オペラ(日本で言うところのメロドラマ)以外の何物でもないように思えます。こんな言い方をすると、『ツイン・ピークス』の熱烈なファンの方に怒られそうですが、2014年7月14日の『ガーディアン(The Guardian)』のインタヴューでは、「ツイン・ピークスはソープ・オペラのパロディだったのですか?」と尋ねられ、デヴィッド・リンチ本人が「いやいやいやいや 、それはソープオペラだよ」と答えています。ですが、そこに日常の平凡なものを不穏な現実を暗示するものへと変えていく、リンチの作品でお馴染みの異様で超現実的な雰囲気が全編に漂っていることによって、世界中の多くの人たちを虜にする特別なドラマになったのでしょう。
で、その超現実的な雰囲気を作るのに欠かすことができなかったのが、作曲家アンジェロ・バダラメンティが生み出した楽曲とそれに奇跡のようにマッチしていたシンガーのジュリー・クルーズの歌声だった、と述べても異論がある方はおそらくいらっしゃらないと思います。
Pitchfolkでは「フォーリング」を1990年代のトップ200曲の中の146位に選ばれていますが、そこでTom Ewing氏は次のように評しています
「「フォーリング」は素晴らしい番組をしっかりと想起させるだけでない。その番組が素晴らしかったのは、ジュリー・クルーズの霜のように繊細な声が期待させる神秘とロマンスに、それが最高の状態で応えていたからだ」。
ちなみに、Pitchfolkの1990年代のトップ200曲の「フォーリング」の前後のランキングを見ると、145位はライド(Ride)の「ヴェイパ・トレイル(Vapour Trail)」で、147位はザ・フューチャー・サウンド・オブ・ロンドン(The Future Sound of London)の「パプア・ニュー・ギニア(Papua New Guinea)」です。前者は90年代のイギリスのシューゲイズが好きだった人、後者は90年代のイギリスのエレクトロニック・ミュージックが好きだった人にとっては、きっと懐かしい名曲ですね。
話を戻しましょう。ジュリー・クルーズのアルバム『フローティング・イントゥ・ザ・ナイト』の中のもう一つのシングルとなった曲「ロッキン・バック・インサイド・マイ・ハート(Rockin’ Back Inside My Heart)」も、彼女のロード・ハウスのバーで歌うシーンが『ツイン・ピークス』のエピソード14で出てきますね。以下の動画でご覧ください。
その他にも、ドラマ『ツイン・ピークス』では、『フローティング・イントゥ・ザ・ナイト』の中の「イントゥ・ザ・ナイト(Into the Night)」、「ザ・ナイティンゲール(The Nightingale)」、「ザ・ワールド・スピンズ(The World Spins)」をサウンド・トラックとして使っています。
いずれの場面をとっても、やはりジュリー・クルーズの歌が流れてくると、物悲し気さや虚無感のようなものが漂ってくるとともに、ツイン・ピークスという場所で起こるさまざまな物語をどこか外部から見つめている静謐な視線(上空から見つめる天使のような視線?)のようなものが感じられませんか? 『ツイン・ピークス』のファンたちがはまってしまった独特の世界を作り出しているのは、この感じなのではないでしょうか?
『ツイン・ピークス』とは別に、デヴィット・リンチが1990年に監督した「インダストリアル・シンフォニーNo.1(Industrial Symphony No. 1: The Dream of the Broken Hearted)」と題された前衛的なコンサートでも、ジュリー・クルーズは『フローティング・イントゥ・ザ・ナイト』の中の「アイ・フロウト・アローン(I Float Alone)」と「ザ・ワールド・スピンズ(The World Spins)」を歌っています。
All Movieによると、この「インダストリアル・シンフォニーNo.1」は、1989年11月10日のニューヨークのブルックリン音楽院の舞台で上演されたそうです。
ジュリー・クルーズ以外の出演者は、ニコラス・ケイジ、ローラ・ダーン、マイケル・J・アンダーソン。ニコラス・ケイジは、リンチ監督の1990年の『ワイルド・アット・ハート(Wild at Heart)』(1990)に出演していますね。ローラ・ダーンも同じく『ワイルド・アット・ハート』と1986年の『ブルー・ベルベット(Blue Velvet)』に、またマイケル・J・アンダーソンもドラマ『ツイン・ピークス』、1992年の映画版『ツイン・ピークス/ローラ・パーマ最後の7日間(Twin Peaks: Fire Walk with Me)』、2001年の『 マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive)』に出演しています。つまり、出演者たちはリンチの映画やドラマの出演でお馴染みの顔触れです。本国では1990年にVHS、1991年にレザー・ディスク、2008年にDVDで発売されているようですが、残念ながら日本では未発売のようです。ちょっと気になるなと思って調べたら、Youtubeに動画がありました。ご興味のある方は以下をどうぞ。
上記の動画は長いので、「インダストリアル・シンフォニーNo.1」でジュリー・クルーズが歌っている場面だけを観たいということであれば、以下の動画をどうぞ。エンディングで、『フローティング・イントゥ・ザ・ナイト』の中の「イントゥ・ザ・ナイト」を歌っているジュリー・クルーズを観ることができます。
どうでもいい話かもしれませんが、最初に聴いたときから思ったのですが、「イントゥ・ザ・ナイト」は、どこか日本の演歌にも通じるようなメロディに感じられるのは私だけでしょうか? たまにありますよね。いわゆる「洋楽」でも演歌ぽい感じがする暗い曲って。もしバックの演奏を変えて、石川さゆりさんあたりが、こぶしを回して「イントゥ・ザ・ナイト」を歌ったたら、どうなるか想像してみてださい。デヴィッド・リンチ的な「夜」とはまるで異なる別種の妖艶なる「夜」へと入って行く歌になりそうじゃないですか? 逆に日本の演歌の中のいくつかの曲も、英語にして演奏を変えて歌い方を変えてカヴァーしたら、案外デヴィッド・リンチの映画やドラマにはまるような気がしなくもありません。
この「インダストリアル・シンフォニーNo.1」の中でジュリー・クルーズが歌っているのは、『フローティング・イントゥ・ザ・ナイト』の中の曲だけではありません。1993年10月12日に同じくワーナー・ブラザース・レコーズからリリースされた彼女の2枚目のアルバム『ザ・ヴォイス・オブ・ラブ(The Voice of Love)』の中に収録されている「アップ・イン・フレームス(Up In Flames)」という曲も歌っています。また、同アルバムの中の曲「クウェスチョンズ・イン・ア・ワールド・オブ・ブルー(Questions in a World of Blue)」、及び「シー・ウッド・ダイ・フォー・ラブ(She Would Die for Love)」と 「ザ・ヴォイス・オブ・ラブ(The Voice of Love)」のインストゥルメンタル・ヴァージョンは、ドラマ『ツイン・ピークス』のスピンオフの映画『ツイン・ピークス/ローラ・パーマ最後の7日間(Twin Peaks: Fire Walk with Me)』(1992)でも使われています。
以下の動画は、映画『ツイン・ピークス/ローラ・パーマ最後の7日間』で、ジュリー・クルーズの歌う「クウェスチョンズ・イン・ア・ワールド・オブ・ブルー(Questions in a World of Blue)」が流れる場面です。
こうして改めて映像を眺めながら聴いてみると、ファンの方からすると今さら言うまでもないことなのでしょうけれども、ジュリー・クルーズの歌声が、この時期のデヴィッド・リンチの諸作品の雰囲気を作る上で、本当に欠かすことができないものになっていることをしみじみと実感しました。
ところで、ジュリー・クルーズの2枚目のアルバム『ザ・ヴォイス・オブ・ラブ』で少々興味深いのは、その中の一曲「イン・マイ・アザー・ワールド(In My Other World)」の作詞作曲のクレジットがデヴィッド・リンチとアンジェロ・バダラメンティではなく、ジュリー・クルーズ本人とルイス・トウッチ(Louis Tucci)という人物になっている点です(ルイス・トウッチという人について調べてみましたが、あまり詳しいことは分からないのですが、次回ないしはもう少し後で、この辺のことを少しだけ書いてみたいと思います)。この曲以外は、前のアルバムと同様、作曲はアンジェロ・バダラメンティ、作詞はデヴィッド・リンチです。
後の2002年に発売されるジュリー・クルーズの3枚目のアルバム『ジ・アート・オブ・ビーイング・ア・ガール(The Art of Being a Girl)』は、彼女がバダラメンティ&リンチから離れて、自ら作詞作曲に積極的に関与して作られています。そのアルバムの曲は、最初の2枚のアルバムの頃のドリーム・ポップというよりも、ジャズやボサノバ的な要素の入ったエレクトロニカ寄りのサウンドになっています。それを聴いた後だから言えることですが、そこからこの「イン・マイ・アザー・ワールド」を聴いてみると、彼女の次のステップへと向かって行くことを予感させる曲になっているようにも思えます。「イン・マイ・アザー・ワールド」は以下でどうぞ。
ちなみに、この「イン・マイ・アザー・ワールド」は、あのイギリスのエレクトロニック・バンド、デペッシュ・モードのマーティン・ゴアがカヴァーして、2003年の彼のソロ・アルバム『カウンターフィット²(Counterfeit²)』の中に収録されています。以下が「イン・マイ・アザー・ワールド」のマーティン・ゴア(Martin Gore)のカヴァーです。どこか遠くから聴こえてくるかのようにエフェクト処理されたマーティン・ゴアの奥まった声によって、曲の題名と歌詞の世界観がうまく表現されているようにも思えます。
ジュリー・クルーズのことをあまり知らない人からすると、どうしてもバダラメンティ&リンチのプロデュースの時代の初期の曲しか思い浮かばないのかもしれません。ですが、バダラメンティ&リンチから離れてからのジュリー・クルーズの作品を少し調べてみると、その後の方がむしろ彼女のポテンシャルがより開放されているかのようにも聴こえてきて、なかなか興味深いものがあります。私自身もジュリー・クルーズのことをフォーローしていたわけではなかったので、今回調べてみて、いろいろ面白い発見がありました(彼女の熱心なファンの方には周知のことなのでしょうけれども)。そのあたりのことについては、次回改めて取り上げてみたいと思います。
ここで「フォーリング」の方に話を戻すと、有名な曲なので「やはり」と言うべきなのでしょうけれども、いろいろなミュージシャンによってカヴァーされているのですね。その中でも個人的にとりわけ気に入ったのが、イギリスのインディー・ロック・バンドのザ・ウェディング・プレゼント(The Wedding Present)の「フォーリング」のカヴァーでした。彼らの1992年のシングル「シルヴァー・ショーツ(Silver Shorts)」のB面でしたが、同年にリリースされたシングルを集めたコンピレーション・アルバム『ヒット・パレード1(Hit Parade 1)』 でも聴くことができます。
途中でノイジーなギターがガツンと入ってくるあたりが聴きどころです。で、それをバックにしながら、ヴォーカルのデイヴィッド・ルイス・ゲッジがダルそうな声を出して歌うわけですが、それによって「フォーリング/フォーリング/私たち恋に落ちていくのかな?(Falling/ Falling/ Are we falling in love?」という元の歌詞のロマンティシズムが、まるでずたずだに引き裂かれていくかのようにも聴こえてしまいます。どうです、最高じゃないですか?
さらにもう一つだけ。ザ・ウェディング・プレゼントのヴァージョンとは真逆で、耽美な世界を極限にまで高めていった、これまた最高に素晴らしい「フォーリング」のカヴァーを紹介します。
オリジナル・シリーズの25年後を舞台にした2017年に放映されたドラマ『ツイン・ピークス』のシーズン3(『ツイン・ピークス――ザ・リターン(Twin Peaks: The Return )』や『ツイン・ピークス――リミテッド・イベント・シリーズ(Twin Peaks: A Limited Event Series)』とも呼ばれています)で、捜査官タミー・プレストンを演じたクリスタ・ベル(Chrysta Bell)の歌う「フォーリング」のカヴァーです(念のために言うと、クリスタ・ベルの「フォーリング」は『ツイン・ピークス』の中で使われてはいません)。以下で、どうぞクリスタ・ベルのエコーがたっぷり効いた美しい声が響き渡るとともに、より異世界感を増加させる奇妙な電子音がバックに流れ続ける「フォーリング」のヴァージョンをお聴きください。
ちなみにクリスタ・ベルは、1997年の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲(ONCE UPON A TIME IN CHINA AND AMERICA)』にも、ジェット・リー演じる武術家ウォン・フェイフォンの恋相手のサラ役として出演していたんですね。
そもそもクリスタ・ベルは、2017年の『ツイン・ピークス』シーズン3でタミー・プレストンを演じる以前から、すでに役者とは別にシンガーとしても活動していました。2006年のデヴィッド・リンチ監督の『インランド・エンパイア(Inland Empire)』では「ポリッシュ・ポエム(Polish Poem)」という曲を歌っています。
以下の動画をご覧ください(まだ映画を観てないという方は、もしかしたら観てからの方がいいかもしれませんが)。『インランド・エンパイア』のエンディングで「ポリッシュ・ポエム」が流れるシーンです。
この種の夢幻な世界へと誘うような女性ヴォーカルが好きな人にとって、「ポリッシュ・ポエム」はたまらない曲なのではないでしょうか? 昔の例で言えば、80年代初頭に個性的なミュージシャンたちを多数送り出したイギリスの4ADというインディー・レコード・レーベルのアーティスト、その中でも特に耽美で幻想的な曲を美しく歌い上げていたデッド・カン・ダンス(Dead Can Dance)のリサ・ジェラルド(Lisa Gerrard)やコクトー・ツインズ(Cocteau Twins)のエリザベス・フレイザー(Elizabeth Fraser)のような女性ヴォーカルが好きだった方であれば、クリスタ・ベルの歌声を聴いて、ぐっとくるのはまず間違いないでしょう。
もし上記の二曲を気に入った方なら、クリスタ・ベルの他の楽曲を聴いてるのも強くお勧めします。最近の曲はエレクトロカ寄りになっていますが、他ならぬデヴィッド・リンチとコラボレイトして生まれた2011年のアルバム『ジス・トレイン(This Train)』は、まさにその期待を裏切らないダークで幻想的な世界へと連れて行ってくれる曲が並んでいます。真夏の昼にビールを飲みながらはまず聴く気にはなれなませんが、寒くなった季節の夜に部屋を薄暗くして(なんだったら暖炉の炎の明かりで、あるいはキャンドルでも灯して)、赤ワインでも飲みながら一人音楽に耳を傾ける場合なんかにはぴったりですよ。
ひとまず以下で、クリスタ・ベルの『ジス・トレイン』の一曲目の「ジス・トレイン」をご試聴ください。
ところで、先ほど4ADというイギリスのインディ・レコード・レーベルの話を出しのには、実は理由がないわけではありません。というのも、先ほどのクリスタ・ベルの「フォーリング」のカヴァー曲をプロデューサーは、4ADの個性的なミュージシャンたちの多数のレコードをプロデュースしていたジョン・フライヤー(John Fryer)だからです(ついでに言えば、先ほどのジュリー・クルーズの「イン・マイ・アザー・ワールド」をカヴァーしたマーティン・ゴアのバンド、デペッシュ・モードの初期のアルバムもジョン・フライヤーがプロデュースしていました)。
しかも加えて言えば、そもそもジュリー・クルーズは「フォーリング」以前に、デヴィッド・リンチ監督の映画『ブルー・ベルベット』で「ミステリーズ・オブ・ラブ(Mysteries of Love)」という曲を歌っていますが、その曲が生まれる発端を作ったのは(この界隈の事情に詳しい方ならご存じだと思われますが)ジョン・フライヤーと4ADの設立者アイヴォ・ワッツ=ラッセル(Ivo Watts-Russell)によるジス・モータル・コイル(This Mortal Coil)というグループが録音した、とつてもなく美しいカヴァー曲「ソング・トゥ・ザ・サイレン(Song to the Siren)」なのですよ。そして、その曲を歌っているのが初期4ADを代表するバンドの一つ、コクトー・ツインズのシンガー、エリザベス・フレイザーなのです。
長くなってしまったので、この辺りについて次回もう少し整理して書いてみたいと思います。
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