ブログについて

映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。


※ご質問は伊泉龍一 公式サイトよりお願いします。伊泉龍一公式サイトはこちら

執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)

ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。

『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』

ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』


60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』


ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』



デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』



サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』



ジェイソン・ヘラー 著
『ストレンジ・スターズ ―デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』



ピーター・ビーバガル 著
『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ -いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』

『時空刑事ライフ・オン・マーズ』から見た70年代のインテリア・デザイン:サンバースト柄のラグからヴァーナー・パントンのオプ・アート的なラグまで

インテリア  テレビ・シリーズ   / 2023.12.14

『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ(Life on Mars)』(画像はBBCより引用)

 ここしばらくイギリスのテレビ・シリーズ『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ(Life on Mars)』の中に出てくる70年代を再現した部屋のインテリア・デザインについて書いています。

 前回はその部屋のインテリアの焦点となっている円形のラグに注目しました。まずは以下で、同シリーズのプロダクション・デザインを務めたマット・ガント(Matt Gant)がウェブ・サイトに掲載してくださっているシーズン2の第4話のセットとなった部屋をご覧ください。

『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ(Life on Mars)』シーズン2の第4話のセットとなった70年代のインテリアを再現したリビング・ルーム

 前回見たように、ソファに囲まれた中心には、オレンジ色の太陽光が広がっているように見える、いわば「サンバースト」をモチーフにした70年代のヴィンテージのラグが置かれています。

 この種のサンバーストのデザインは、60年代から70年代にかけての北欧のラグでときどき見かけます。今回は、これと似た円形のヴィンテージ・ラグをいくつか見ていきたいと思います。

 まずは以下をご覧ください。画像はEERFMANN VINTAGE商品ページから引用しました。

サンバーストの柄の60年代のヴィンテージのラグ

 デザインのパターンは違いますが、中心部の色がイエローとオレンジのため、『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』で使われているラグと一見したところの印象は似ています。こちらは60年代のヴィンテージのラグです。オレンジ色の輪のところに、ヘブライ文字らしき形が施されていて、オカルト的というかオリエンタルというか、ちょっとエキゾチックで神秘的な印象も感じられます。

 さらに以下のラグをご覧ください。画像はVNTG商品ページから引用しました。

サンバーストの柄の70年代のヴィンテージのラグ

 こちらもサンバーストをモチーフにした70年代のヴィンテージのラグです。茶色の木目のフローリングとラグの縁の黒ベースの色合いがしっくりきていますね。

 もう一つ、同様に縁が濃い色になっている以下のラグをご覧ください。画像は1stDibis商品ページから引用しました。

サンフラワー柄の70年代の北欧のヴィンテージのラグ

 こちらはサンバーストというよりもサンフラワー(ひまわり)の柄となっている70年代の北欧のラグです。これもまた中心からあふれ出すようなエナジーが感じられますね。

 特徴のない漠然としたリビング・ルームでも、こうした中心から広がっていく柄のパターンの大きなラグをソファーの前に一枚敷くだけで、インテリア・デザインの焦点が作り出されるとともに、全体の雰囲気を華やかにしてくれることは間違いありません。

 サンバーストの柄ではないですが、同じくオレンジ色を基調とした以下のラグをご覧ください。画像はVNTG商品ページから引用しました。

デンマークのホイヤ・エクスポート・ウィルトン(Højer Eksport Wilton)社の60年代のラグ

 中国の陰陽のシンボルを彷彿させなくもない柄のせいか、ちょっとスピリチュアルな印象すら感じられます。こちらはデンマークのホイヤ・エクスポート・ウィルトン(Højer Eksport Wilton)社から販売されていた60年代のラグです。

 60年代のホイヤ・エクスポート・ウィルトン社は、こうした魅力的なデザインのラグを多数作っていました。例えば以下をご覧ください。画像はmippies商品ページから引用しました。

デンマークのホイヤ・エクスポート・ウィルトン(Højer Eksport Wilton)社の60年代のラグ

 これもホイヤ・エクスポート・ウィルトン社の60年代のラグです。このデザインは、サンバーストというよりも、むしろスターバーストと言った方がいいかもしれませんね。いずれにせよ、光線の柄が鋭角なため、こちらからはよりシャープな印象を受けますので、曲線よりも直線を重視したモダンなインテリア・デザインとも調和しそうです。

 同様の柄で色違いのラグもあります。画像はDESIGN MARKET商品ページから引用しました。

デンマークのホイヤ・エクスポート・ウィルトン(Højer Eksport Wilton)社の60年代のラグ

 ブルーやブラックの壁のリビング・ルームに、こちらのブルーを基調したラグを敷けば、かなりクールなインテリア・デザインが出来上がりそうじゃないですか。

 ちなみに、このラグや70年代のインテリア・デザインとはまったく関係ないですが、ブルーの壁にブルーのカーペットが組み合わされると、こんなにも美しいリビング・ルームになるという一例をご覧ください。画像はADの中のStephen Treffinger氏の記事‘Inside a Park Avenue Co-Op That Playfully Breaks With Convention’から引用しました。

 色の濃淡の変化はありますが、床、壁、天井を含め部屋全体が圧倒的にブルーで占められていますね。そこに天井のシャンデリアと壁のウォール・ランプのゴールドが入ることで高級感が醸し出されています。こちらは、ニューヨークのインテリア・デザイナーのブロック・フォースブロム(Brock Florsblom)が手掛けたアパートメントです。

 この部屋の細部を分析し始めると、本題から逸れすぎますのでやめておきますが、置かれているヴィンテージの家具から想像すると、お金がかかっていることは間違いありません。

 ところで、先ほどのホイヤ・エクスポート・ウィルトン社のギザギザとしたパターンのヴィンテージのラグがお好みの方、以下のラグはいかがでしょうか? 画像はamazon.co.uk商品ページから引用しました。

 もう一つ以下もご覧ください。画像はAmazon.co.uk商品ページから引用しました。

 この2つのラグは、ヴィンテージではないので、価格は比較的安価です。

 さらにもう一つヴィンテージではない現代のラグをご覧ください。画像はAmazon.co.uk商品ページから引用しました。

 この最後の大胆なはっきりとしたデザインのラグが自分的には強く心惹かれます。この種のデザインのラグは、他にも現行品でかなりたくさんの種類を見つけることができます。

 ところで、円形のラグを置くことを考えた場合、最初に見た『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』のリビング・ルームのようにソファーの形状が曲線を描いていないと合わないのではないかと思っている人はいませんか? それは誤解です。以下のリビング・ルームの写真をご覧ください。画像はTREND CARPET商品ページから引用しました。

 70年代のごちゃついたインテリア・デザインとは全く無縁の解放感のあるあっさりとしたリビング・ルームですが、ここでは曲線を描いていない普通の形状のソファーの前に円形のラグがうまく収まっています。

 敷かれているオリエンタルなデザインのラグはヴィンテージではなく、現在(2023年12月14日)も販売されているトルコの商品です。その心動かされずにはいられない美しいデザインを以下でご覧ください。画像はTREND CARPET商品ページから引用しました。

 円形のラグのデザインには、この種の中東的な装飾がまさしくぴったりきます。今回の主題とは関係ないので、この種のオリエンタルなラグについてあれこれ書くのは控えておきます。ご興味のある方は、例えばAmazonなどでも多数販売されていますので、検索してみてください。

 それはそうと、一人暮らしでコンパクトな部屋に住んでいる方は、ソファの前にラグを置く話をすると、こう思われるかもしれません。「ラグがインテリアの重要な要素であることは分かっているけど、そもそも大きなソファを置くゆとりがないから、円形のラグを敷く場所はないよ」。なるほど。その場合は、アーム・チェアやラウンジ・チェアとかの下に円形のラグを敷くのはいかがでしょうか?

 今回の主題である70年代のインテリア・デザインとはまったくかけ離れていますが、以下の部屋をご覧ください。 画像はamazon.co.uk商品ページから引用しました。

 こちらはラグジュアリーな雰囲気漂う部屋の中の高級そうなチェアの下に円形のラグが置かれています。日本の普通の一人暮らし用のマンションとは似ても似つかない部屋だとは思いますが、アーム・チェアを一つ置いてその下に円形のラグを敷くと、ご覧の通り、寛ぎのプライベートな空間ができるわけです。

 写真の中に映っているラグは、amazon.co.ukで売り切れていたので、値段は分かりませんでした。ですが、amazon.co.ukで普通に売っている商品ですから、おそらくそれほど高額ではないものと思われます。

 ですが、アーム・チェアの方は高級そうに見えますね。イタリアの高級な家具にお詳しい方なら、このチェアを一目見て、イタリアの建築家でデザイナーのジオ・ポンティ(Gio Ponti)がデザインしたイタリアのモルテーニ&C(Molteni&C)から販売されているD.154.2というチェアに似ているなと思わたのではないでしょうか。

 そう、よく似ているのですが、よく見ると先ほどの写真はD.154.2の模造品なのかもしれません。というのも、写真の方のチェアには張地に継ぎ目が見えますし、微妙に形も違うような気がします。以下の正規品と見比べてみてください。画像はMolteni&C商品ページから引用しました。

 ご覧の通り、先ほどのチェアのような張地の継ぎ目はありません。

 本題のラグとは関係ない話になってしまいました。話をラグへ戻します。

 60年代から70年代のインテリア好きの人からすると、この時代を特徴づける印象的なラグのデザインに言及する際、どうしても見逃すことができないのは、デンマークのデザイナー、ヴァーナー・パントン(Verner Panton)によってデザインされたラグなのではないでしょうか?

 このブログでも以前にテレビ・シリーズの『ウェスト・ワールド(West World)』やビョークの1995年の曲「アーミイ・オブ・ミー(Army of Me)」のミュージック・ビデオとの関連でヴァーナー・パントンについて触れたことがあります。その際、彼の1967年の「パントン・チェア」を紹介しました。詳しくは以下の記事をご覧ください。

史上最もサンプリング使用されたドラム・ビーツ。レッド・ツェッペリンの「ホウェン・ザ・レヴィー・ブレイクス」(1)ーービョークの「アーミイ・オブ・ミー」とヴァーナー・パントンのチェア。

 ここではヴァーナー・パントンの数あるラグの中から円形のものに絞り、かつ非常にインパクトのあるデザインのものを選んでみました。画像は1stDibs商品ページから引用しました。

ヴァーナー・パントン(Verner Panton)の60年代のオプ・アート的なラグ

 ヴァーナー・パートンがデザインしたこの60年代のラグでは、ご覧の通り、中心部に向かって暗く小さくなっていくオレンジとレッドの円によって、あたかも中心部がくぼんでいるかのような錯視の効果が生み出され、いわゆるオプ・アート的なデザインになっています。

 もう一つ同じく60年代にパントンがデザインした以下のラグをご覧ください。画像はARCHITONIC商品ページから引用しました。

ヴァーナー・パントン(Verner Panton)の60年代のオプ・アート的なラグ

 このイエローの中心部から徐々に色が変化しながら7色のドットで構成されているラグにも、オプ・アート的な錯視の効果があります。ぼんやりと全体をしばらく見詰めてみてください。視覚が混乱をきたしてきて、あたかも色の輪を通して光が外に向かって伝達されているかのようにも感じられます。

 それはそうと、上の画像だけだと、ただ色覚検査の図を思い出させるような感じがして、ラグのようには見えないかもしれません。ということで、以下の写真もご覧ください。画像はARCHITONIC商品ページから引用しました。

ヴァーナー・パントン(Verner Panton)の60年代のオプ・アート的なラグとパントン・チェア

 ホワイトの「パントン・チェア」がラグの近くに置いてあります。このラグと一緒に置かれると、どういうわけかパントン・チェアが子供のおもちゃのようにも見えませんか? それどころか、この写真を見ていると、ストップモーションを使ったクレイ・アニメーションの映画のキャラクターがトコトコ歩いて出てきそうな異次元の不可思議な世界を覗いているような感覚に襲われるのは私だけでしょうか?

 この種のヴァーナー・パントンのラグは好みがはっきりと分かれるのではないかと思います。だとしても、彼の尋常ならざる非凡なデザインのラグを前に、目を留めずに素通りできる人など、おそらく誰一人いないはずです。

 次回も引き続き『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』のリビング・ルームのセットを見ながら、70年代のインテリアの世界へと目を向けてみたいと思います。

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