最近の投稿
魔力の象徴としての「ヒョウ柄」:映画『媚薬』(1958年)の魔女ギルの衣装とインテリアから見る50年・・・映画『媚薬』(1958年)の中のビートニクな魔女とジャズが流れる占星術クラブ
「醜い老婆」から「若い女性」の姿へと変わっていく魔女(witch): 映画『オズの魔法使い』(193・・・
男性支配の物質主義的な世界の中で女性たちが求めること:映画『紳士は金髪がお好き』で「ヒョウ柄」の衣装・・・
記号としての「アニマル柄」:1934年の映画『特急20世紀』と1945年の『失われた週末』の中で「ヒ・・・
カテゴリ
フード&ドリンクビデオ・ゲーム
映画ポスター
ブック・カバー
ファッション
映画
インテリア
建築
音楽
ミュージック・ビデオ
コマーシャル映像
車・バイク
テレビ・シリーズ
アニメーション
アーカイブ
2024年1月2023年12月
2023年11月
2023年7月
2023年6月
2023年5月
2023年4月
2023年3月
2023年2月
2023年1月
2022年12月
2022年11月
2022年10月
ブログについて
映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。
執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)
ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。
ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』
ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』
デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』
サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』
『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』から見た70年代のインテリア・デザイン:ターキッシュ・ラグからマルセル・ワンダースの極上のオリエンタルなラグまで
前々回からイギリスのテレビ・シリーズ『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』の中で再現された70年代のリビング・ルームのインテリア・デザインについて書いています。特に前回は当時作られていたコーヒー・テーブルの中からいくつかを選んで紹介しました。
ところで、前回の記事をお読みくださった方の中に、こう思われた方がいらっしゃるかもしれません。「70年代のガラスとクロムを組み合わせたコーヒー・テーブルのデザインは好きだけど、自分の家のリビング・ルームには合わないな」。
そう思われる気持ちもわかります。日本の現在の一般的な賃貸マンションの部屋だと茶色の木目のフローリングが圧倒的に多いようです。確かに、そうした床の上には前回見たような70年代的なガラスとクロムのコーヒー・テーブルはしっくりこない場合もあるでしょう。
ですが、そこで出番となるのが、コーヒー・テーブルの下に敷くラグですよ。ということで、今回はラグについて書いてみたいと思います。
まずは前々回と前回同様、同シリーズのプロダクション・デザインを務めたマット・ガント(Matt Gant)がウェブ・サイトに掲載してくださっているシーズン2の第4話のセットとなった部屋をご覧ください。
まずは手前の方に注目ください。一部しか見えませんが、ターキッシュ・ラグ(トルコ絨毯)的なオリエンタルな装飾のラグが敷いてあるのがお分かりでしょうか?
ボヘミアン・スタイルのインテリアがお好きな方ならともかくとして、ミニマリズムなインテリアが好みの方からすると、トルコ絨毯のような装飾過多なデザインのオリエンタルなラグなんていうのは、古臭くて最も避けるべきアイテムであるように思われがちかもしれません。
ですが以下をご覧ください。偏見は持つべきはないと思い知らされます。画像Catalina Rugの中のRose Shadkam氏の記事‘Modern Interior Design With Oriental Rugs’から引用しました。
全体的にミニマリストが好む白い壁を基調としている非常にモダンなデザインのリビング・ルームの床にイランのカシャン・ラグが敷かれています。
いかでしょう? オリエンタルなラグがモダンな部屋の雰囲気と一見合わないような印象を与えながらも、木目のコーヒー・テーブルやサボテンや壁にかけられている抽象画との色合い的な調和のせいか、全体のデザインとして絶妙な統一感がありますよね。そればかりか、このラグのおかげで暖かみある部屋にもなっています。
本題とは関係ありませんが、上の写真の部屋の中の向かって右奥に置いてあるブラックのシェードのついたフロア・ランプは、イタリアの建築家でプロダクト・デザイナーのミケーレ・デ・ルッキ(Michele De Lucchi)によってデザインされ、イタリアのアルテミデ(Artemide)社から発売されている「トロメオ(TOLOMEO)」というとても有名なフロア・ランプです。しかも、フレームの色がブラックではなくシルバーですので、以下のアウトドア対応の「トロメオ・メガ・アウトドア・フロア・ランプ(TOLOMEO MEGA OUTDOOR FLOOR LAMP)」なのではないかと思われます。画像はmodern planetの商品ページから引用しました。
もう一つ、向かって左側の手前に置いてあるラウンジ・チェアをご覧ください。こちらは、フィンランドのデザイナー、 ユリオ・クッカプロ(Yrjo Kukkapuro)によって1964年にデザインされたカルセリ(Karuselli)という、これまた有名なラウンジ・チェアです。インテリア好きの方だったら、かのイギリスのデザイナーのテレンス・コンラン(Terence Conran)がお気に入りだったラウンジ・チェアとして記憶されている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 画像はFINNISH DESIGN SHOPの商品ページから引用しました。
こうしたボヘミアンやオリエンタルなイメージからはほど遠い照明や家具が置いてある部屋にカシャン・ラグが敷かれていても、先ほどの写真が教えてくれている通り、まったく違和感がないどころか、むしろ全体として独特の味わいのあるインテリア・デザインが生まれています。
オリエンタルなラグが敷いてあるさらに別の部屋も見てみましょう。こちらはCatalina Rugの中のRose Shadkam氏の記事‘9 Interior Design Styles with Oriental Rugs’でミニマリスト・インテリア・デザインとして紹介されている部屋です。
ラグを除けば、全体的に色をほとんど使わず、シンプルな家具しか置かれていない、いかにもミニマリスト的なインテリア・デザインです。むしろ、ラグが置かれていないところを想像してみてください。全体的に少し寂しそうな印象の部屋になりそうじゃないですか? ここ20年ぐらいの間、インテリアのミニマリズムを好む日本人の方が増えたような気がしますが、この部屋の感じは、そうした方々にも参考にできるのではないかと思います。
さらにもう一部屋ご覧ください。画像はlilla Rugsの中の‘Instagram’s Artisanal Home Furnishing Trend: Persian Rugs’から引用しました。
この種のリビング・ルームでラグを敷こうとした場合、つい無難に無地のモノトーンのラグを選んでしまいそうじゃないですか? ところが、ここではあえてオリエンタルなラグを敷くことで、ホワイトの元々明るい部屋をよりいっそう華やかに演出しています。
この部屋の感じだったら、白い壁の多い日本のリビング・ルームでも参考にできそうじゃないですか? 何と言っても、こちらの部屋は、日本でも人気の「北欧家具」が配置されています。
例えば目立つところだけ指摘しておくと、手前のダイニング・テーブルと一緒に置かれているのは、デンマークのデザイナーのハンス・ウェグナー(Hans Wegner)がデザインし、1949年にカール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Son)社から発売されたCH24 ウィッシュボーン・チェア(CH24 Wishbone Chair)です。これは日本の住宅の写真を見ていると、至るところで目にするほど非常に有名なチェアですので、北欧家具が好きな人の中には、お持ちの方もかなりいらっしゃるのではないでしょうか? 画像はCarl Hansen & Sonの商品ページから引用しました。
また、天井に取り付けられているランプをご覧ください。こちらはシモン・カーカウフ(Simon Karkov)によってデザインされ、デンマークのノーマン・コペンヘイゲン(Normann Copenhagen)社から2002年に発売されたNorm 69というペンダント・ライトです画像はnormann copenhagenの商品ページから引用しました。
このNorm69はサイズが4種類ありますが、先ほどの写真のリビング・ルームはおそらく一番大きなサイズのXXラージだと思います。
記憶によるとNorm69は、確かそれほど高価なランプではなかったはずと思い、日本からも買うことができる通販サイト、FINNISH DESIGN SHOPの商品ページで値段を調べてみました。一番大きなXXラージの本体の価格は35,925円で、送料は5,186円でした。一番小さなタイプのスモールの場合は本体の価格が13,472円で、送料は3,647円でした。同じ北欧で言えば、イケア(Ikea)のペンダント・ランプよりかは少し高いぐらいな感じでしょうか。
Norm69はノーマン・コペンヘイゲンが設立と同時に最初にリリースされたシグニチャー的なランプです。北欧家具好きの方で、ペンダント・ランプを探している方、ご自宅にいかがでしょうか? リビングはもちろんですが、自宅の階段が広い方なら、以下のように複数吊り下げるなんていうのも素敵じゃないですか? 以下の画像はFINNISH DESIGN SHOPの商品ページから引用しました。
こうした北欧の家具や照明が置いてある先ほどのリビング・ルームを改めてご覧になってみてください。北欧風インテリアを目指している人でも自宅の部屋にオリエンタルなラグを置いてアクセントをつけてみようかなという気持ちになりませんか?
しかも、今回見てきた3つの部屋の例にあるようなちょっと折衷的なインテリア・デザインは、いかにも教科書通りの〇〇的な部屋よりも新鮮さが感じられて、見ていて楽しいと思いませんか?
これを書いている2023年から見て、70年代のインテリアに魅力を感じる要素の一つも、やはりその折衷的に見えるところにあるのではないかと思います。
『時空刑事1973』の70年代を再現したリビング・ルームでターキッシュ・ラグが使われているというところから始まり、だいぶんずれた話にはなってしまいました。
ここでラグ自体の話に戻りましょう。70年代のヴィンテージのターキッシュ・ラグではありませんが、以下のとんでもなく素晴らしいデザインのオリエンタルなラグをご覧ください。画像はmoooi carpetsの商品ページから引用しました。
これはオランダ出身のデザイナー、マルセル・ワンダース(Marcel Wanders)によってデザインされ、オランダのモーイ(moooi)社から発売されている「S.F.M. #076」と題されたラグです。
moooi carpetsの商品ページの説明には次のように書かれています。「今までに例のない華麗さと貴重な装飾的特徴によって描かれたパターンの中で、自然と神の神聖な数学が繁茂している」。ちょっと不可解にも思われる説明ではありますが、その言わんとするところはなんとなく分からないでもありません。
それにしても、こんな異次元へと誘うような精緻なデザインのラグが自宅のリビング・ルームの足下にあったら、ソファに座りながら、ただひたすらじーっと眺めてしまいそうじゃないですか?
日本でもマルセル・ワンダースの家具や照明が好きな人は多いのではないでしょうか? しかも、ワンダースが化粧品のブランドのデコルテ(DECORTÉ)のためのプロダクトも数多く作っていることからすると、彼のエレガントで息を呑むほど美しい数々のデザインに魅了されている女性の方も多いのではないかと思います。
例えばデコルテから発売されたヴァイス&ヴァーチュ(Vice&Virtue)のボトルのデザインもマルセル・ワンダースです。画像はMarcel Wandersのウェブ・サイトのVice&Virtueのページから引用しました。
このボトルのガラス部分にもマルセル・ワンダースらしいエレガントな装飾が施されています。この写真自体も美しく、ぐっと目を引き付けますね。それにしても、ボトルが風船を膨らませているかのように見えるのは私だけでしょうか?
これまた本題とは直接関係ないですが、オリエンタルなデザインのつながりという点で、個人的に好きすぎてたまらないマルセル・ワンダースのカトラリーを紹介します。画像はMarcel Wandersのウェブ・サイトのJARDIN D’EDENのページから引用しました。
これは、銀食器の製造で有名なフランスのブランド、クリストフル(Christofle)のために、マルセル・ワンダースが2007年にデザインしたジャルダン・エデン(JARDIN D’EDEN)というテーブル・ウェアのシリーズの中のカトラリーです。
そもそも、このタトゥーの入った人の半身とともに並べられたインパクトのある写真自体も、一目見て強い訴えが感じられます。このカトラリーがどれほどエレガントで高価な銀製であったとしても、狩猟採集文化の頃の原始的かつ野性的な強さを連想させようとしているかのようです。
ジャルダン・エデンのシリーズの中には、このカトラリー以外のプロダクトがいろいろあります。例えば以下のショット・グラスはいかがですか? 画像はクリストフルの商品ページから引用しました。
クリストフルの製品なので当然ですが、先ほどのカトラリーも、このショット・グラスも結構な値段です。ですが、実物をご覧になったことがある方なら同意してくださるのではと思いますが、その美しさとクォリティは納得の価格です。
最後に、ラグの話に戻りますが、もう一つマルセル・ワンダースによる驚くべきデザインのラグをご覧ください。画像はTOYO KITCHEN STYLEの商品ページから引用しました。
このクリスタル・ファイア(Crystal Fire)と題されているラグをじっと見詰めてみてください。万華鏡の中を覗き込んだような光景にめまいを感じてきませんか? 60年代後半のサイケデリックな感じのインテリアを目指している方だったら、極上のデザインのラグの一つなのではないでしょうか?
マルセル・ワンダースのモーイから発売されているラグは他にも多数あります。どれも高額ではありますが、まず他では探しても見つからない比類のないデザインのラグであることは間違いありません。日本でもTOYO KITCHEN STYLEで取り扱われていますので、ワンダースのラグが気に入られた方は、ぜひともオンライン・ショップを覗いてみてください。
また次回もしつこく『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』の70年代を再現したリビング・ルームのさらに別のところへと目を向けてみようと思っています。
この記事が気に入ったら下のボタンでシェア!