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ブログについて
映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。
執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)
ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。
ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』
ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』
デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』
サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』
映画の中のフランク・ロイド・ライト設計のエニス・ハウス――フリーメーソンのシンボルと秘教主義者マンリ・P・ホール。
映画 建築 音楽 コマーシャル映像 / 2022.11.23
以前にTVドラマ『ウエスト・ワールド』の中で実際の撮影に使用された建築家フランク・ロイド・ライトが設計したミラード・ハウスについて書いてから、ここしばらくの間、ライト関連の話を続けてきました。
ライトの数々の建築物は映画やドラマで実際の撮影場所になったり、あるいはセットに着想を与えたりしていることが実に多いのですが、その中でも前回取り上げたエニス・ハウスがとりわけ頻繁に使われているようです。今回は、映画の中に登場するフランク・ロイド・ライトのエニス・ハウスを少し調べてみました。
まずは改めてエニス・ハウスの外観をご覧ください。以下の画像は、Finding Mr. Wrightの中の‘Charles Ennis Residence (1923), Los Angeles, California’から引用しました。
周囲の一般住宅がなければ、まるでどこかのテーマパークの中にある建物のようにも見えてしまうほどの際立った外観ですね。威厳のある要塞ないしは城のようにすら見えます。また、他の家の大きさと見比べるとわかりますが、住宅というよりも何かの施設かと思わせるほどの規模です。ですが、エニス・ハウスはカリフォルニア州ロサンゼルスのロス・フェリス地区の丘の上に1924年に建てられた元々は個人住宅です。1923年にフランク・ロイド・ライトが、チャールズ&メイベル・エニス夫妻のために設計しました。エニス夫妻は6500平方フィートの豪邸を設計することをライトに依頼したそうです。
ちなみに、フランク・ロイド・ライトがロサンゼルスで最初に手掛けた建築は、前回触れたホリーホック・ハウスでした。以前にこのブログの中で触れたTVドラマ『ウエストワールド』のシーズン3で撮影に使われたライト設計のミラード・ハウスは、彼が最初のテキスタイル・ブロックを採用した家でしたが、ちょうどエニス・ハウスの竣工の前年の1923年に完成しています。
今回の主題のエニス・ハウスですが、ライトのロサンゼルスの他の一連の住宅とは比べ物にならない多額の予算を投じて作られたようです。にもかかわらず、プロジェクトが完成するまでには、擁壁の基礎の測量ミスなどから生じた工期遅れやコストオーバーなど色々な問題が発生したようです。そのあたりの事情が詳しく書いてあるLosAngeles Magazineの中のSteve Oney氏の記事‘House on Haunted Hill’によると、着工から9カ月ほど経った1924年12月10日、結局、建築家と施主は別れることになったようです。今やフランク・ロイド・ライトがこの時期に設計した建築を代表する建物となっているエニス・ハウスですが、1926年に『ロサンゼルス・タイムズ』がこの家の写真を掲載した際、「この家のすべてはアニス夫妻ないしは工事施工者によってデザインされた」と書かれていて、そこにフランク・ロイド・ライトの名前への言及すらなかったとのこと。
とはいえ、1924年12月10日の時点で外観は完成していました。一方で未完成だった内部のいくつかの部分は、ライトの仕様に従わず完成させたようです。このことにライトは我慢がならなかったようで、前述の記事によると、エニス夫妻によって行われた17の過失を手紙に列挙し、次のようにも非難しています。
「あなた方の建築業者とともに、あなた方は建築のプランを修正し完全に破壊しました……そのような過ちが壮麗な建物を著しく台無しにしたのです。それは悲しむべきことであり、その建物がどうなりえたかを知っていた者には、決して忘れることも許すこともできません」。
建築家と施主の間に、いろいろあったわけですね。そもそも構造面でも多くの欠陥があったようですし。Feel guideのBrent Lambert氏の記事‘The Blade Runner Mansion: The Story Of Frank Lloyd Wright’s Ennis House In Los Angeles’によると、「建設後すぐにコンクリート・ブロックがひび割れ、壁の下部は張力で歪んでしまった」ようです。
ところで、フランク・ロイド・ライト財団のウェブサイトで紹介されているエニス・ハウスの説明のページには、『ダヴィンチ・コード』的なものが好きな人には気になるだろう、ちょっと面白そうなことが載っています。それによると、エニス・ハウスの特注でデザインされたテキスタイル・ブロックのパターンが「グリーク・キーのデザインが様式化された「g」と似ている」という点から、この形は「チャールズ・アニスが所属していたメイソンの結社を暗示しているのかもしれない」とのことです。
実際のテキスタイル・ブロックの形をご覧ください。以下の画像は、Just Above Sunsetの‘Ennis House – Frank Lloyd Wright – Textile Blocks’から引用しました。
より見やすい以下の画像もどうぞご覧ください。MASONIC NEWSの中のChristopher Hodapp氏の記事‘Onetime LA Home of Manly P. Hall Up For Sale’から引用しました。
確かに向かって右下の形は、フリーメーソンにお決まりのモチーフであるコンパスを表しているようにも見えます。ちなみに、「g」は神(God)を表します。
いずれにせよ、チャールズ・アニスがフリーメーソンの会員だったこと自体は事実です。前述のSteve Oney氏の記事‘House on Haunted Hill’によると、1929年にチャールズ・アニスが亡くなったとき、エニス・ハウスのリビング・ルームで行われた葬儀は、フリーメーソンのテンプル騎士団第9ロッジの指揮官が執り行ったそうです。
この話の関連で言えば、妻のメイベル・エニスがエニス・ハウスを手放した後、居住者となったのが秘教研究者のマンリー・P・ホールだったことも興味がわきます。
一般の人はあまりご存じないかもしれませんが、マンリー・P・ホール(Manly Palmer Hall, 1901 – 1990)という人は、いわゆるオカルトや秘教的な分野と関連する多数の本の著者として非常に有名です。その中でも1928年に出版され、彼の最もよく知られた著作となったThe Secret Teachings of All Ages (1928)は、日本でも翻訳出版されています(マンリー・P・ホール著、大沼忠弘、山田耕士、吉村正和訳、『象徴哲学体系1 古代の密儀』、『象徴哲学体系2 秘密の博物誌』、『象徴哲学体系3 カバラと薔薇十字団』、『象徴哲学体系4 錬金術』(人文書院))。日本語訳は1981年から出版されていますが、なんと2015年にも新装版が出ています。好きな人には興味の尽きせぬ分野のようで、今もなお密かに人気があるんですね。
ホールが妻のフェイとともにエニス・ハウスに住んでいたのは1930年代のことだそうです。1934年にホールは、エニス・ハウスと同じくロス・フェリス地区に世界中の叡智を研究するための非営利組織「フィロソフィカル・リサーチ・ソサエティ(Philosophical Research Society)」を設立しています。
Steve Oney氏の前述の記事によると、ホールはエニス・ハウスに「圧倒された」そうです。しかも有名なカリスマ的秘教研究者というホールの立場を考えると、エニス・ハウスの雰囲気はこの上なくぴったりでしょう。ただし、実際の住み心地はと言えば、決して良いものではなかったようです。Steve Oney氏は次のように書いています。
「彼は漏れ口を心配しながらも(「ブロックのジグザグに水が溜まった」と後に回想している)、それを止めることは何もしなかった。彼にとって、この家は並外れた人生のための舞台装置だったのだ。ガラス製のタイルの暖炉を背景として使い、華美な漆塗りの仏壇を設置し、数多くの探求者やセレブリティたちを集めていた」。
また、Christopher Hodapp氏は‘Onetime LA Home of Manly P. Hall Up For Sale’という記事で次のようにも述べています。
「ロサンゼルスで通常の一連の春の雨の後、下の階は2フィートの溜まった水でびしょびしょになった。この家は、セレブリティな哲学者・神秘主義者・秘教主義者としてのホールの公的なペルソナへぴったりと適した芝居ががかった環境だったにもかかわらず、彼もうんざりしてすぐに出て行ってしまった」。
マンリー・P・ホールが住んでいたのはわずかな期間でしかなかったにせよ、その頃のエニス・ハウスは、そこに置かれていただろうエキゾチックで秘教的なさまざまな物や出入りしてたであろうちょっと変わった人たちのおかげで、よりいっそうの神秘的(怪しげな?)な雰囲気を纏っていたのかもしれません。
さて、そろそろ前回の予告通り、映画の中のエニス・ハウスの話に移りましょう。
まずはウィリアム・キャッスル監督の1959年のホラー映画『ハウス・オン・ホーンテッド・ヒル(House on Haunted Hill)(邦題:地獄へつゞく部屋)』の以下の場面をご覧ください。
エニス・ハウスの外観がばっちり使われていますね。モノクロというのもまた独特の雰囲気が出ていいですね。この映画では、エニス・ハウスの外観のショットから始まり、そこに俳優のヴィンセント・プライスの顔が重ねられ手写しだされます。以下のオフィシャル・トレイラーにも、冒頭からエニス・ハウスの前述のテキスタイル・ブロックが映し出されます。ホラー映画が苦手でなければ、どうぞこの分野の当時のアイコンとも言うべきヴィンセント・プライスの神妙な語りとともに、50年代の恐怖の館の雰囲気をお楽しみください。
『ハウス・オン・ホーンテッド・ヒル』では、エニス・ハウスが非常に不気味な場所として描かれています。映画の中では、この家で無事に一晩過ごせたら、1万ドルを渡してもらうことを約束された5人の人たちが描かれます。要するにエニス・ハウスは、いわゆる呪われた幽霊屋敷として使われているのです。
ところで、エニス・ハウスが映画に登場するのは、『ハウス・オン・ホーンテッド・ヒル』が最初ではありません。調べてみると、エニス・ハウスが登場する最初の映画は、どうやらマイケル・カーティス監督の1933年の映画『フィーメイル(Feemale)』のようです(こちらは実際に観たことはありませんが)。以下をご覧ください。またしても例のテキスタイル・ブロックが背景に見えますね。画像はCommune Postの‘Architecture and Film’から引用しました。
『フィーメイル』はホラー映画ではありません。ですが、先ほどの『ハウス・オン・ホーンテッド・ヒル』に戻って夜の建物の外観を見ると、どうもエニス・ハウスはホラー映画との相性がいいようにも思われます。
『ハウス・オン・ホーンテッド・ハウス』の中で、この家は100年前に建てられたと述べられています。もちろん、1959年の映画なので、そのときの現実のエニス・ハウスはまだ35年ほどしか経っていません。メソアメリカのモチーフを採用しているがゆえに、エニス・ハウスが実際よりもはるかに古い建物に見えるのだと思いますが、その点は、ホラー映画の舞台となる家にふさわしい物件として十分な資格があると言っていいでしょう。それに加えて、ADの中のKatherine McLaughlin氏の記事’What Makes This Frank Lloyd Wright House So Beloved in Hollywood?’によると、エニス・ハウスは「完璧なホラーの家」となるのに他に二つの重要な性質を備えているそうです。
それは「丘の上」に建っていることと「広く高い屋根」です。この二つの要素は、アルフレッド・ヒッチコック監督の1960年の映画『サイコ(Psycho)』の中でアンソニー・パーキンス演じるノーマン・ベイツの家とともに有名となった特徴です。以下が『サイコ』の中のベイツの家です。画像は、Universal Cityの‘Psycho House and Bates Motel’から引用しました。
ヒッチコックは、このベイツの家の着想を、アメリカの画家エドワード・ホッパー(Edward Hopper, 1882-1967)が描いた1925年の作品『ハウス・バイ・ザ・レイルロード(House by the Railroad)』から得たそうです。以下がホッパーの作品です。画像は、PopUp Paintingの中のAnnie氏の記事‘5 Things You Didn’t Know About Edward Hopper’s House By The Railroad, 1925’から引用しました。
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ホッパーの絵に見られるマンサードの屋根(二重勾配の屋根)は、ヒッチコックの『サイコ』のベイツの家にも採用されていますね。ちなみに、ホッパーはこの絵を描く際、ニューヨーク州のヘイバーストローという町にある1885年に建てられた実際の家をモデルにしたようです。以下のその家の画像は、Atlas Obscuraの中のRachelAAdler氏の記事‘The House by the Railroad’から引用しました
『サイコ』で見られる二つの要素、丘の上に建っていることと高い屋根の形状は、どうやらその後の今や古典となっているようなホラー映画でも使われるようになっていったようです。この実在の家こそが、その後の映画の幽霊屋敷のいわばプロトタイプなのですね。
例えば、あの有名なホラー映画、スタンリー・キューブリック監督の1980年の『シャイニング(The Shining)』のオーバールック・ホテルも、その系譜を継いでいるようです。以下のオーバールック・ホテルの画像は、BLOODYDISGUSTINGの中のBrad Miska氏の‘Watch ‘The Shining’ at The Overlook Hotel’s Filming Location’から引用しました。
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『シャイニング』のオーバールック・ホテルについては、いろいろ書いてみたいことがありますので機会を改めて。
今回は、フランク・ロイド・ライトのエニス・ハウスとホラー映画との関連の話になってしまいました。もちろん、エニス・ハウスが使われているのは、ホラー映画だけではありません。MovieMapsの‘Movies Filmed at Ennis House’を見ると、エニス・ハウスが関連している映画やTVドラマには次のものがあるようです。
『ラッシュアワー(Rush Hour)』(1988)。『ブレード・ランナー(Blade Runner)』(1982)。『バフィー 〜恋する十字架〜(Buffy the Vampire Slayer)』(1997-2003)。『ツイン・ピークス』(1990-1991)。『ブラック・レイン(Black Rain)』(1989)。『13F(The Thirteenth Floor)』(1999)。『グリマーマン(The Glimmer Man)』(1996)。『ベスト・キッド3(The Karate Kid, Part III)』(1989)。『ブラッド・タイズ(Blood Ties)』(1991)。『ロケッティア(The Rocketeer)』(1991)。『ハウス・オブ・フランケンシュタイン(House of Frankenstein)』(1997)。『フォーリン・エンジェルス(Fallen Angels)』(1993-1996)。『イナゴの日(The Day of the Locust)』(1975)。『電子頭脳人間(The Terminal Man)』(1974)。『リプレイスメント・キラー(The Replacement Killers)』(1998)。『ザ・ビートニックス(The Beatnicks)』(2001)。『ロサンゼルス・プレイズ・イットセルフ(Los Angeles Plays Itself)』(2003)。『タイムズトーカーズ(Timestalkers)』(1987)。
上記以外にも、OUNOの記事‘Architecture in the movies, Part 5 – Frank Lloyd Wright’s Ennis House’を見ると、以下の映画やドラマなどでもエニス・ハウスが使われているようです。以下の映画があります。
『ハウリング2(The Howling II . . . Your Sister is a Werewolf)』(1984)、『ジ・アナイアレイター(The Annihilator)』 (1986)、『レモ/第一の挑戦(Remo Williams)』 (1986)、『カルヴァン・クラインのオブセッション、デヴィッド・リンチによるコマーシャル(Calvin Klein’s Obsession, commercial by David Lynch』(1990)『プレデター2(Predator 2)』(1990)、『わが街(Grand Canyon )』(1991)、『アン・インコンヴィニエント・ウォーマン(An Inconvenient Woman (2 part))』 (1991)。
調べていくと他にもまだあるかもしれませんが、とにかく多種多様な映画やドラマに使われていますね。とはいえ、上記の映画の中でもエニス・ハウスとの関連で最も印象深いのは、やはりリドリー・スコット監督の『ブレード・ランナー』だと言って間違いないでしょう。ということで、『ブレード・ランナー』のセットについてエニス・ハウスとの関連も含め、機会を改めて少し書いてみたいと思います。
最後に、上記の中にあるデヴィッド・リンチ監督によって作れられた『カルヴァン・クラインのオブセッション』(1990)のコマーシャル動画をどうぞ。最初と最後にエニス・ハウスのテキスタイル・ブロックが出てきます。これを見ると、改めてテキスタイル・ブロックのよりいっそうの魅力がモノクロの映像で発揮されるのではないかと個人的には思ってしまいました。
最後に、と言いましたが、もう少しだけ。同じくデヴィッド・リンチ監督の2001年の映画『マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive )」の中のクラブ・サイレシオ(Club Silencio)の扉のフレームにエニス・ハウスのテキスタイル・ブロックの装飾が使われているのをご覧ください。以下の画像は、STRANGE DAYS IN LA: FROM MAGNOLIA TO INHERENT VICEの中のGAWAR氏の記事‘FLW’s Ennis House and Hollywood Movies’から引用しました。
よろしければ、『マルホランド・ドライブ』のクラブ・サイレンシオの少々恐ろし気なシーンを動画でもどうぞ。
ちなみに、デヴィッド・リンチは2011年に映画の中ではなくパリに実在のクラブ・サイレシオをオープンしています。残念ながら、エニス・ハウスのテキスタイル・ブロックの装飾は使われていないようです。以下が内装の雰囲気です。画像はサイレシオのデザインを担当したパリを拠点に活動するラファエル・ナヴォー(Raphael Navot)氏のウェブサイトから引用させていただきました。
奥のカーテンの背後のブルーライトに照らされた小さなステージがいい雰囲気ですね。あそこでデヴィッド・リンチ監督のドラマ『ツイン・ピークス』の中で歌っていたジュリー・クルーズ(Julee Cruise)が「フォーリング(Falling)」を歌う姿を想像したくなります。 とても残念なことに、ジュリー・クルーズさんは、2022年6月9日に65歳で亡くなられてしまいました。『ツイン・ピークス』の中の最も印象的なサウンド・トラックとなった彼女の「フォーリング」を、よろしければお聴きください。
『ツイン・ピークス』の中で歌うジュリー・クルーズは、その歌声だけでなく、ヴィジュアル的にもとても印象的ですね。人形のような愛らしい顔立ちにブロンド・ヘアで赤いパーティー・ドレス。どことなく50年代後半あたりへのノスタルジーを感じさせるのは、その彼女の外見と相まって、歌声の背後のトレモロ・ギターの響き(それこそシャドウズ(The Shadows)のハンク・マーヴィン(Hank Marvin)のギター・プレイを彷彿させるような響き)のおかげなのでしょうね。
『ツイン・ピークス』関連でもう一つだけ。同ドラマの中のテレビの中で断片的に流れるソープ・オペラ、すなわち劇中劇の『インヴィテーション・トゥ・ラブ(Invitation to Love)』を撮影にするのに、ロイドのエニス・ハウスが使われています。以下の画像をご覧ください。またしても例のエニス・ハウスのテキスタイル・ブロックが見えますね。画像は、Movie Mapsの‘Photo of Invitation to Love’から引用しました。
デヴィッド・リンチの映画の中に見られるエニス・ハウスのテキスタイル・ブロックの話で、少々終わりをひっぱり過ぎてしましまいました。
次回は、ここ数回の流れから、エニス・ハウスとの関連がある映画『ブレード・ランナー』のセットについて書いてみたいとところですが、その前に今回『ツイン・ピークス』の話が出たので、いったんジュリー・クルーズの音楽を振り返ってみようかなと思っています。
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