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ブログについて
映画やTVドラマなどを観ていて、その中で流れてくる音楽、撮影に使われた建築やセットのデザイン、舞台の背景となるインテリア、登場人物が手にしているガジェットやプロダクトなどが気になったことはありませんか?
このブログでは、映画やTVドラマの中に登場するさまざまなものを調べて紹介していきます。そうしたものにも目を向けてみると、映画やTVドラマが今まで以上に楽しくなるはずです。映画、TVドラマ、音楽、建築、インテリアのどれかに興味がある方に、また自分と同じようにそのどれもが寝ても覚めても好きでたまらないという方に、面白いと思ってくれるような記事を発見してもらえたらという思いで書いています。
執筆者:伊泉龍一(いずみりゅういち)
ブログ以外には、以下のような書籍の翻訳をしたり、本を書いたりもしています。
ドン・ラティン著 伊泉 龍一訳
『至福を追い求めて ―60年代のスピリチュアルな理想が 現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』
ロバート・C・コトレル 著 伊泉 龍一 訳
『60sカウンターカルチャー ~セックス・ドラッグ・ロックンロール』
ドン・ラティン 著
『ハーバード・サイケデリック・クラブ ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』
デヴィッド・ヘップワース 著
『アンコモン・ピープル ―「ロック・スター」の誕生から終焉まで』
サラ・バートレット 著
『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』
TVドラマ『ウエストワールド』の中の建築(7)――フランク・ロイド・ライトのミラード・ハウス
インテリア 建築 テレビ・シリーズ / 2022.10.28
前回はHBO製作の人気ドラマ『ウエストワールド』のシーズン2で、アーノルドの自宅として撮影に使われたフランク・ロイド・ライトのミラード・ハウス(Millard House)(日本ではミラード邸とも呼ばれています)の外観を見てみました。今回はちょっと中を覗いてみましょう。
まずは『ウエストワールド』のシーンをご覧ください。以下の画像は、WESTWORLD FILMING LOCATIONSの中の記事“Arnold’s/ Bernard’s Home”から引用しました。
続けて実際の「ミラード・ハウス」の内部を見てみましょう。以下の画像は、HOME DESIGNINGの中の記事‘Frank Lloyd Wright’s Millard House For Sale’から引用しました。
ご覧の通り、建物の内部にも外壁と同様、装飾されたコンクリート・ブロックが使用されています。
ちなみに、ミラード・ハウスの総面積は2,400平方フィート(約222平米)で、庭は約1エーカー(約4,046平米)あるそうです。建物の総面積は、それほど大きくはありませんが、庭はさすがに広いですね。とりあえず中二階をご覧ください。
ここでもテキスタイル・コンクリートが使われていて、木材で作られた天井や床に対してのよいアクセントとなっていますね。もしテキスタイル・コンクリートがなく、建材が木だけだったら、あまり面白みのない素朴な建物になってしまっていたのではないかと思いませんか?
ミラード・ハウスの中をもっと見てみたいという場合は、YoutubeでKCETのチャンネルが、Millard House Walkthroughと題した動画をアップしているので、ぜひご覧ください。
写真で見るよりも、こちらの動画の方がさらに細部の装飾がよく見えます。やはりコンクリート・ブロックがデザインの要になっていますね。
ただし、ライトのこのコンクリート・ブロックには、実際上、いろいろ問題もあったようです。INHABITATの中のDiane Pham氏の記事‘Frank Lloyd Wright’s Iconic “La Miniatura” Millard House Hits the Market for $4.5 Million in Pasadena, California’では、次のように述べられています。「ライトのコンクリートの家の全てが、ある程度の修復工事が必要とされてきた。アリス・ミラードがその家に引っ越してきたすぐ後でさえ、嵐が下の階を水浸しにした」。「不十分な雨水排水管」のため、「地下室は汚水で完全に満たされ、ダイニング・ルームでは6インチまで水が上がった」。
なんとも大変な問題を抱えていたようです。今で言えば、欠陥住宅ですかね。とはいえ、かつて建築上の問題を生じさせることがあったのだとしても、テキスタイル・コンクリートの反復が作り出す造形美なくして、この時代のライトの独創的な家のスタイルは生まれなかったわけですよね。しかも、それが後世のクリエイターたちへ与えた影響から考えてみると、非常に価値あるものだったことは言うまでもありません。
例えば、『ウエストワールド』と同じくHBO製作のとてつもない人気のTVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)』に登場するミーリーンの宮殿のデザインには、フランク・ロイド・ライトのテキスタイル・コンクリートからの大きな影響があるそうです。このことについては、次回取り上げてみたいと思います。
ところで前回、前置きの余談で書いたフランク・ロイド・ライトの照明、「タリアセン2」ですが、ヤマギワからリデザインされた特別モデルがいくつか発売されていたなと思い検索してみたら、ライト生誕150周年の2017年から続々と出ていました。やはり「タリアセン」は人気も需要も高いんですね。そんな中で、ELLEの「フランク・ロイド・ライトの照明「タリアセン2」の特別限定モデルの第3弾が発売中!」という2019年12月11日の記事やCasa Brutusの「ライトの照明〈タリアセン〉オマージュ第3弾は妹島和世、永山祐子、鈴木啓太が参加!」という2019年11月12日の記事を改めて見た中で、とりわけ目を引かれたのが以下の「タリアセン2」のヴァージョンです。以下の画像は、Casa Brutusの記事から引用させていただきました。
これは建築家の妹島和世氏による「タリアセン2」の2019年の新ヴァージョン「FORM OF LIGHT」です。前述のELLEの記事によると、「「FORM OF LIGHT」は、鋼磨き仕上げの台の上にクリアなアクリルのボールが8つ積み重ねられたもの」だそうです。もはや言われなければ、「タリアセン2」が基になっているとは分からないほど、大胆なリデザインですね。
yamagiwa Online Storeによると、2017年から始まった「タリアセン特別限定モデル」は、「照明「タリアセン2」を原型としながら、作家それぞれの視点でライトの建築に対する思想・概念、建築に用いられた様々なモチーフが再解釈されたオマージュ作品」だそうです。なるほど。「再解釈されたオマージュ作品」だとすれば、確かにリデザインの自由度は、かなり大きくしてもいいことになりそうですね。
それからもう一つ別の「特別限定モデル」をご覧ください。建築家の伊藤豊雄氏による2018年の「タリアセンポリゴン」です。以下の画像は、yamagiwa Online Storeから引用させていただきました。
これもまた原型から遠く離れた大胆なリデザインです。ちなみに、ヤマギワのオンラインサイトでの価格は、1,474,000円。やはり高額ですね。お金にゆとりがあり、かつふさわしい配置場所が家にあるならば、正直言って、ぜひとも欲しいです。「タリアセンポリゴン」について詳しいことが気になる方は、yamagiwaonlinestoreのyoutubeのチャンネルでの「HOMMAGE TO FRANK LLOYD WRIGHT 2018「TALIESIN POLYGON (タリアセン ポリゴン)」 伊東 豊雄モデル」で、伊藤氏ご本人の解説を動画で見ることができます。
ところで、先ほどの「タリアセンポリゴン」の写真が撮影されたのは、伊藤氏の設計によって2004年に竣工した「TOD’S表参道ビル」内の窓際だと思われます。以下のTOD’S表参道ビルの写真は、DESIGNART 2017の「ARCHITECTURE TOD’S表参道ビル」から引用させていただきました。
先ほどの「タリアセン・ポリゴン」の写真を見ていると、そのまま『ウエストワールド』での近未来都市の場面に出てきそうな気がしませんか?
念のために付け加えておくと、この二つ以外の「タリアセン2」の新ヴァージョンも各々が個性的で、とても魅力的です。ぜひともヤマギワのオンラインサイトをご覧ください。
本題から逸れた話が長くなりましたが、次回はいったん『ウエストワールド』の話を中断して、『ゲーム・オブ・スローンズ』へのフランク・ロイド・ライトの影響について、調べてみます。
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